「天晴」塾~大学受験国語~

主に国立難関大学の国語の入試問題を解説します

2024年度 早稲田大学商学部 国語解答解説

 こんにちは。大学受験「天晴」塾 代表のbackbeat-akaです。

 今回は2024年度早稲田大学商学部の問題を一括掲載します。

 商学部の問題は年度によって難易度の差が激しいのが特徴です。

 現代文にその傾向が顕著で、今年度の問題は、正解を選びがたい設問が随所にみられ、その意味で「難問」といえるでしょう。

 大学発表の正解に「???」と首をひねる問題が多々ありました。

 この問題を完答(正解)するのはかなり大変です。

 まあ、受験生にとってはそんなことも言っていられないのですが。

 一般的に言って、社会科学、経済系の先生が作成する(と思われる)現代文の問題は、作成者の専門へのこだわりが強すぎて、受験生がついて行けない傾向があるように思います。

 古典は昨年から古文と漢文がそれぞれ独立した形で出題されています。

 難易度は現代文ほど高くはないと思います。

 従って商学部の対策としては、試験時間が60分なので、まず古典を30分以内で解いて、そのあと現代文を30分で解く、というのが得策でしょう。

 いかに古典を早く仕上げるか、がポイントです。

本文マーキング①

本文マーキング②

本文マーキング③

 

2024年 早稲田大学商学部 国語解答解説
第一問(現代文) 予想30点  (問七は各4点 その他は各2点と予想)
                             
◎本文展開(マッピング
第一意味段落(①~④) 
①    1〈進歩としての歴史〉・・・ローカルな社会の地形
   ↓
  欧米列強の非西欧世界への進出=植民地支配/それに対抗する近代化/地球規模で

  の政治、経済、文化的交流
   ↓
    2文字通りグローバルに共有される世=界の体制と社会の地形となった
    ↓(だがしかし)
    〈進歩としての歴史〉は・・・
   理念=グローバルに共有される
        現実=近代におけるユートピア的な集合表象(マンフォード)
                  =国民国家=ローカルな表象を媒介として追求されていった

② 3国民や国家がユートピアである(=A)とは、奇妙なこと
      ↓(なぜならそれは)
    (十九世紀から二十世紀の社会における確固たる現実として)
  国民や国家がユートピアであるとは、〈あること〉だったもの(=B)と思われる

  から
   ↓
③ マンフォードの主張
  国民国家=国民的ユートピア(=A)   
     =ブルジョア階級の消費生活の理想の追求/労働者たちが生産に従事・・・矛盾対立
   ↓ 
    巨大都市を媒介項として結びつけ、編成
    国民的、国土規模の新たな社会の実現を目指すもの
      ↓(それは)
  〝くに〟や地域を超えて人為的に設定された境界内の国土/人工の社会
      ↓
  国民国家ユートピア(=A)・・・
  〈あること〉の問題を解決するための〈あるべきこと〉(=A)として人工的に作

  り出そうとしたもの

④ (事実・・・例)
  二十世紀初めの人類社会
  国民や国民国家であること
       いくつかの国々・・・すでに〈あること〉だった(=B)
       多くの諸民族・・・目指されるべき〈あるべきこと〉(=A)
         すでに国民国家化した諸国・・・未来にむけて目指すべき〈あるべきこと〉(=A)

第二意味段落(⑤~⑧)                                                             
⑤ 近代政治史におけるユートピア                               あるべきこと
   ・・・国民国家を社会の地形における空間的な枠組みとして〈 A 〉  の実現を目

      指していった
↓(さらに)
⑥ 二十世紀半ば
  国民国家というユートピアの変奏が存在
  (帝国主義植民地主義全体主義ファシズム大日本帝国/八紘一宇/第三帝 

   国)                                  ↓                                               
⑦ 事実上はディストピア=誇大妄想的なユートピア・・・潰えた
  ↓
  自律した国民、国民国家となることが目指されるべき〈ユートピア的なもの〉
↓(このように)
⑧ 近代的世界において
  ネーション/国民国家・・・〈あること〉(=B)ではなく〈あるべきこと〉だった
     ↓(そしてまた)
    いったん国民国家が成立した市域や集団においてもそれは
 〈あるべきこと〉(=A)として追求される=遂行的な社会的事実
    ナショナリズム・・・〈あるべきこと〉(=A)として国民や国民国家を目指し続ける

                    こと
   ⇔  すでにある(B)国民や国民国家に排他的な価値を見出す

第三意味段落(⑨)
⑨ 第一次世界大戦第二次世界大戦・・・民族・国民・国民国家たろうとする集団の対  

                   立や生存権の拡張をめぐるもの
  =十九世紀後半~二十世紀・・・
    4古典的な意味での地上のユートピアの存在=〈他の空間〉が存在する余地は失われ

                        ていた
       ⇔二十世紀半ばまで・・・
  植民地支配や帝国主義的侵略=大国や先進国による国民国家の空間的拡張が行われ

                ていた
      ↓
    有限な地球に併存する国民国家
   ・・・未来における〈あるべきこと〉(=A)の実現を目指す/資源と領土の争い

     /戦争や紛争

第四意味段落(⑩~⑪)
⑩ 5ヨーロッパにおいてナショナリズム ・・・世界に意味とリアリティを与えるもの=

                     文化的な重要性
      ↓(それは)
  6西欧においてユートピア文学が成立し、流行し、そこで語られるユートピアのあ

   りかが、〈他の空間〉(=土地)から〈他の時間〉(=未来)へと転移していっ

   た時代の中におさまっている                              

      国民国家・・・社会神話としてのユートピア(マンフォードの指摘)
      ↓(さらに重要なこと)
    ナショナリズムの誕生と流行
    スイス人に特有の病として発見されたノスタルジア(=過去)が他の諸国民にも流行
      ↓(その対象が)
  故郷という〈他の空間〉(-)から過去という〈他の時間〉(+)へと移行してい

  った時代と重なる
⑪ 7十八世紀にノスタルジアがスイス人以外の多くの民族・国民に見出されるように

   なると、それは祖国を離れた兵士たちの士気を阻喪させるという意味で、愛国心

   ナショナリズムにとって公共的な脅威であると見なされることがある一方で、

   他方では強い愛国心ナショナリズムの表れとしても理解されるようになってい

   った
      ↓
    それぞれの民族や文化の固有性と強く結びついたものとしても主張されていった

第五意味段落(⑫~⑬)
⑫ ベネディクト・アンダーソンの引用
    ↓
⑬ 国民国家が「歴史的」である
  ↓(それが)
  人類史において(G普遍的)なものではなく、
    ↓
    近代における発明であり、流行である
    ↓(だがその一方で)
    国民国家・・・過去から無限の未来に向けて連続して存在するものとして想像される=

       歴史的な存在
    歴史的・・・近代という特定の歴史的時代に成立した
       その時代に成立した特定の体制と不可分のもの

第六意味段落(⑭)
⑭ 近代化以前
  諸文化・諸文明・・・それぞれに異なる世=界の体制の下にある、異なる社会の地形

            の中にそれぞれを定位させていた
   ↓(だが)
  過去~現在~未来へと進歩していく/衰退していく
     =社会の時間的地形・・・あらゆる人間に妥当する普遍的な〈人類史としての世界

              史〉
     ↓(その一方で)
    8そうした過程は現実には、地球上の特定の土地や文化(=西欧)と結びついた人間

   の集団によって生まれるものとして了解され、また現象してきた
      ↓
    ネーションや国民国家・・・
    人類の進歩という普遍的な過程・・・
     =地球上の特定の領域(=西欧)に対する帰属性と主権をもった排他的かつ特殊な

   主体によるもの
      地理的世界の中に位置づける
      ↓(その時)
    〈進歩としての歴史〉・・・それぞれの国民と国民国家の進歩の歴史
              人びとが自らの国民性を生き、発現させ、国民としての国

              家を建設する歴史となる 
第七意味段落(⑮)
⑮ 〈進歩としての歴史〉における〈未来〉というユートピア
    =人間と社会を帰属していた場所から社会的、物理的に切り離していく近代化の過程
    =〈あるべきこと〉へと向かう過程
   ↓(だが)
    〈いま・ここ〉に〈あること〉を支えてきた伝統が進歩によって解体されることへの

   不安
        ↓
  進歩への対抗ユートピアとしての保守主義の理念を生み出す
  進歩主義としてのナショナリズム・・・
      未来のユートピアと共に進む共同体としてネーションと国民国家を想像することを

   可能にする
    保守主義としてのナショナリズム・・・
   神話的な過去から続く歴史と伝統の連続性の中で〈いま・ここ〉を了解すること

   も可能にした 
   ↓
  9かくしてネーションと国民国家は、進歩主義的なユートピアと、進歩主義への反

   動としてのノスタルジアを結びつける


◎設問解説
*例年、短めの記述問題が出題されていたが、昨年度以降、出題されなくなった。
*問題文は、近代において国民国家が、進歩主義ユートピアとなる一方で、保守主義

 のノスタルジアの対象ともなることを論じている。文章中に登場する語句の定義が不

 十分なまま設問の対象となっていたり、解答を特定しにくい設問も多くあり、大学発

 表の解答に疑問を呈さざるを得ない設問も見られた。そういう意味では難問と言える

 だろう。

問一(記述・漢字)
 a 率  b 希(稀)少  c  定位

問二(マーク・選択)
*第①段落の内容把握問題。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
②    〈進歩としての歴史〉
   欧米列強の非西欧世界への進出=植民地支配
    ↓
   それに対抗する近代化
    ↓
   地球規模での政治、経済、文化的交流
  =歴史をより進んだ状態へ変化する過程ととらえる近代の理念・・・解答要素(X)
    ↓
   文字通りグローバルに共有される世=界の体制と社会の地形となった
    〈進歩としての歴史〉=近代におけるユートピア的な集合表象
     国民国家=ローカルな表象を媒介として追求されていった
   =国民国家という空間的、時間的な世界認識が世界的に広まった・・・解答要素(Y)
*この程度しか本文からは拾えない。
 イ・・・「世界をグローバルな体制として認識するローカルな思想」が意味不明。

     「ロ ーカルからグローバルへ」が正しい。
 ロ・・「人間がグローバル化される」という記述は本文にはない。
 ハ・・・大学発表の正解。

    前近代的な地域に対して西欧こそが進歩した地域として世界に認識されるに至  

   った」という部分について、知識としてはその通りなのだが、果たして本文から

   読み取れるのか疑問。一行目の「欧米列強の植民 地支配」という記述のみを根拠

   とするのは苦しい。
 ニ・・・「すでに現実にあった国民国家」が誤り。
 ホ・・・「非西欧世界も次々と国民国家を実現することによって」が誤り。

問三(マーク・選択)
*傍線部理由説明。第②段落~第④段落の展開を追いかける。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
② 国民や国家がユートピアであるとは、奇妙なこと
      ↓(なぜならそれは)
  国民や国家がユートピアであるとは、〈あること〉だったものと思われるから
③ 国民国家=国民的ユートピア(=A)
 =
     ・国民的、国土規模の新たな社会の実現を目指すもの
  ・人為的に設定された境界内の国土/人工の社会
  ・〈あるべきこと〉(=A)として人工的に作り出そうとしたもの
④ 国民や国民国家であること
       いくつかの国々・・・すでに〈あること〉だった(=B)
        すでに国民国家化した諸国・・・未来にむけて目指すべき〈あるべきこと〉(=A)
  ↓
*つまり、国民や国民国家ユートピアであるとは、すでに〈あること〉(=B)と認

 識されており、それが進歩主義ユートピア(=A)と矛盾するから「奇妙」なので

 ある。
 イ・・・内容は本文と相違ないが、傍線部の答えになっていないので誤り。
 ロ・・「イ」と同様。
 ハ・・・「ありもしない理想的な国家であるかのように作り上げようとした」が本文に

     内容がなく、話題として誤り。
 ニ・・・消去法でこれが正解。

             ただし、第③段落冒頭部分を「分断された社会や多くの問題を抱えた国」と言

    っていいのか疑問。傍線部の「奇妙」の説明として(A)との対比説明が不十

            分。これが記述答案だったら正解にはならないだろう。

問四(マーク・選択)
*大学から、「試験前に解答用紙に不備があることが判明したため、解答対象から外し

 ました」との発表あり。設問は空欄AからFの中で、「あること」が入る空欄一カ所

 を問うもの。正解は「B」と思われる。

問五(マーク・選択)
*傍線部内容説明問題。第⑨段落の内容を押さえる。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑨ 古典的な意味での地上のユートピアの存在=〈他の空間〉が存在する余地は失われ

                       ていた
 「他の空間」=大国や先進国による国民国家の空間的拡張
                〈あるべきこと〉の実現を目指す/資源と領土の争い/戦争や紛争
  ↓
*ということは、「古典的な意味での地上のユートピア」は「他の空間」であり、それ

 は他国の領土を侵略することであることが分かる。「古典的」というのは十九世紀後

 半から二十世紀にかけての帝国主義による領土拡大のことを言っている。
 イ・・・「想像の」が誤り。現実に起こったことである。
 ロ・・・「誇大妄想」が誤り。「イ」と同じ理由。
 ハ・・・「未来を先取り」の方向が誤り。
 ニ・・・正解。「ユートピア」の説明として「理想郷」も問題ない。

問六(マーク・選択)
*傍線部理由説明問題。第⑨段落後半と第⑩段落の内容を押さえる。「ナショナリズ

 ム」「ユートピア」「ユートピア文学」の共通点を考える。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑨ 二十世紀半ばまで・・・
  植民地支配や帝国主義的侵略=大国や先進国による国民国家の空間的拡張が行われ

  ていた
⑩ ヨーロッパにおいてナショナリズム
      ↓(それは)
  西欧においてユートピア文学が成立し、流行し、そこで語られるユートピアのあり

  かが、〈他の空間〉から〈他の時間〉へと転移していった時代の中におさまってい

                                     
    スイス人に特有の病として発見されたノスタルジア(=過去)が他の諸国民にも流行
      ↓(その対象が)
  故郷という〈他の空間〉から過去という〈他の時間〉へと移行していった時代と重

  なる
 ↓
*論点を整理すると
1 ヨーロッパが帝国主義ナショナリズム)によって空間的拡張を行い、それによっ

  て「他の空間」(=故郷)を失った
2 ユートピア文学で語られるユートピアのありかを「他の時間」(未来や過去)に求

  めるようになった
3 特に文学を通じてノスタルジアという過去の時間に目が向けられるようになった
*以上が解答の要素となる。
 イ・・・大学発表の正解。

   ユートピアをもはや自国の未来に求めるしかなくなっていた」という記述は、

   「ユートピア」「他の時間」を「未来」のみに限定し、「過去」(ノスタルジ

   ア)に言及してない。記述問題だとしたら非常に不十分な解答と言える。
 ロ・・・「イ」と同様の理由で「他の時間」を「過去」にのみ限定している点が誤り。

     「未来」「過去」両方の要素が必要。
    ハ・・・「キチの再発見がヨーロッパ人に特有の病」が方向誤り。
 ニ・・・「現実には手に入らなくなったユートピア」が方向誤り。

問七(記述・抜き出し)
*抜き出し問題。第⑩段落後半と第⑪段落が解答の根拠となる。「それぞれ兵士たちが

 何を求めたからか」が問われているが、本文からは「スイス人に特有の病であるノス

 タルジア」に関する十分な説明が読み取れないので、傍線部の意味が分かりにくく

 なっている。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑩ ナショナリズムの誕生と流行
    スイス人に特有の病として発見されたノスタルジア(=過去)が他の諸国民にも流行
 故郷という〈他の空間〉(-)から過去という〈他の時間〉(+)へと移行していっ

 た
⑪ 十八世紀にノスタルジアがスイス人以外の多くの民族・国民に見出されるようにな

  ると、それは祖国を離れた兵士たちの士気を阻喪させるという意味で、愛国心やナ

  ショナリズムにとって公共的な脅威であると見なされることがある一方で、他方で

  は強い愛国心ナショナリズムの表れとしても理解されるようになっていった     
ノスタルジアが・・・
  X「祖国を離れた兵士たちの士気を阻喪させる」(-)
   ↑
 兵士たちが求めていたものは「祖国」であることが分かるので、
 ⑩「故郷という〈他の空間〉」・・・正解
  Y「強い愛国心ナショナリズムの表れとしても理解される」(+)
    ↑
  兵士たちが求めていたものはノスタルジア=「過去という時間」であることがわかる

  ので、
  ⑩「過去という〈他の時間〉」・・・正解
*Yについては、第⑮段落「過去から続く歴史と伝統の連続性」も解答候補になる。

問八(マーク・選択)
*空欄補充問題。空欄前後の文脈を捉えれば簡単。選択肢をヒントにして、「近代にお

 ける発明であり、流行である」との対比を考える。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑬ 国民国家が「歴史的」である
  ↓(それが)
  人類史において(G)なものではなく、
             ⇔
     近代における発明であり、流行である
*「近代における」と時間を限定しているので、空欄には反対の意味の「ロ 普遍的」が 

 入る。「ニ」だと表現が矛盾する。 
問九(マーク・選択)
*傍線部説明問題。第⑬段落~第⑭段落の内容を押さえる。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑬ 国民国家・・・過去から未来に向けて連続して存在するもの=歴史的な存在
     歴史的・・・近代という特定の時代に成立した/特定の体制と不可分のもの
 ↓
⑭ 社会の時間的地形・・・過去~現在~未来へと進歩/衰退
  あらゆる人間に妥当する普遍的な〈人類史としての世界史〉
     ↓(その一方で)
    そうした過程は現実には、地球上の特定の土地や文化(=西欧)と結びついた人間の

 集団によって生まれるものとして了解され、また現象してきた
    人類の進歩という普遍的な過程・・・
     =地球上の特定の領域(=西欧)に対する帰属性と主権をもった排他的かつ特殊な

   主体によるもの
      ↓(その時)
    〈進歩としての歴史〉・・・それぞれの国民と国民国家の進歩の歴史
              人びとが自らの国民性を生き、発現させ、国民としての国

              家を建設する歴史となる 
  ↓
*つまり傍線部は、「人類の進歩」「進歩としての歴史」という理念が普遍化される過 

 程が、現実には特定の土地や文化(=西欧の国民国家)と結びついた集団によって国

 民国家を建設する歴史となるよう発現させてきた、という意味である。このことを述

 べている選択肢を検討するのだが、またもや怪しい選択肢ばかりである。
 イ・・・内容はそのとおりかも知れないが、本文では述べられていない。
 ロ・・・大学発表の正解。
    ただ、西欧が理想の世界という「共通認識ができた」という内容を本文から読み

   取るのは困難である。「共通認識ができた」だけでは、「現実に」ある「現象」

   の説明とはならない。
    ハ・・・「西欧の~衰退が」が誤り。 
 ニ・・・第①段落末の「理念としては~〈進歩としての歴史〉は~国民国家というロー

     カルな表象を媒介として現実には追求されていった」という一文を踏まえ

     ば、これが正解でもいいのではないか。
 *問二の正解が大学発表のように「ハ」であるなら、「ニ」が正解となるはずである。
       
問十(マーク・選択)
*傍線部内容説明問題。第⑮段落の内容を押さえる。「ユートピア」と「ノスタルジ

 ア」との結びつきをとらえる。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑮ 〈未来〉というユートピア
    =人間と社会を帰属していた場所から社会的、物理的に切り離していく近代化の

     過程
     ↓(だが)
    伝統が進歩によって解体されることへの不安は、進歩への対抗ユートピアとしての保

 守主義の理念を生み出す
      ↓
  未来のユートピアと共に進む共同体としてネーションと国民国家を想像=進歩主義
  神話的な過去から続く歴史と伝統の連続性の中で〈いま・ここ〉を了解する=保守

  主義
    ↓
  かくしてネーションと国民国家は、進歩主義的なユートピアと、進歩主義への反動

  としてのノスタルジアを結びつける
  ↓
*「ユートピア」=進歩主義/理想/未来/近代化の過程/〈あるべきこと〉
   「ノスタルジア」=保守主義/過去から続く歴史と伝統の連続性/〈あること〉/        〈いま・ここ〉
国民国家は、この両面を持っている、という主張である。
 イ・・・「それを幻想と呼ぶ力学を必然的に引き起こす矛盾したシステム」の部分の方 

     向が誤り。
 ロ・・・「地球環境を変えていく」と限定されてはいない。「過去の神話を重視」も方

             向が誤り。
 ハ・・・「特定の国が主導することへの反発」「神話こそが歴史」の話題が誤り。
 ニ・・・正解。


第二問(古文) 予想22点 (問十三のみ4点 その他は各2点と予想)
*「発心集」は鴨長明による鎌倉時代の仏教説話集。競い合う二人の僧侶のエピソード

 と、中国の帝と盗賊の話。

問十一(マーク・選択) 
*空欄補充問題。空欄Aの直前の「このこと」とは前行の「」と西尾の聖が言ったこと

 を指す。身体に火を付けてでも東尾の聖に勝ちたいという西尾の聖の言葉を
(A)人・・・「尊し」として涙を流す
(B)者・・・「こは何事ぞ。いと本意ならず。妄念なりや。定めて天狗などにこそなる

       べかり(C)」と思う。
*「(A)人は~」「おのづからもれ(B)者は~」という形になっているので、AB 

 は対比的な語が入る。
正解:A=「ホ」、B=「ハ」
*「ロ」「ニ」の組み合わせについて。A=「ロ」は悪くないが、B=「ニ」だとする

 と、後に続く「思はずに」「こ(=「今ぞ東尾の聖に勝ちはてぬる」)は何ごとぞ」 

 とのつながりがおかしくなる。             

問十二(マーク・選択)
*指示語の問題。問十一と連動している。西尾の聖の「東尾の聖に勝った」という発言

 に対して「何事ぞ」「いと本意ならず。妄念なりや」と否定的に述べていることから

 わかる。
正解:「ニ」

問十三(記述・文法)
*係り結びの問題。空欄の上に係助詞「こそ」があるので、文末は已然形になる。落と

 してはいけない問題。
正解:「ぬれ」

問十四(マーク・選択)
*理由説明問題。傍線部の口語訳は次の通り。
  「(この袋の中にある物などを全部取り出して)、すべてもとどおりに置いて、そっ

 と(皇帝の寝室を)出で行こうとする」・・・この理由を、盗人の言葉から探してい

 く。
 ↓
*傍線部の後、皇帝が盗人に問いかける。
  「『お前は何者だ。どうして他人の物を奪い、また、どういう気持ちで盗ったものを

  わざわざ返すのだ』とおっしゃる」 ↓
*その後、盗人の言葉があり、この内容を追いかけていくと、言葉の最後に
 「『せめては、かやうの物をも食し侍りぬべかりけり。由なき心を発し侍りけるもの

 かなとくやしく思ひて』」
 (せめて、このような灰でもなんでも食べましたら良かったのだなあと気づきまし

   た。盗みなどつまらない心を起こしてしまいましたなあと後悔しております。) 
*と述べているので、ここが解答の根拠となる。
正解:「ニ」 他の選択肢はすべて口語訳が誤り。

問十五(マーク・選択)
*理由説明問題。設問文の「帝の寝所に」の部分が太字で強調されている。これは本文

    解釈のヒントになっている。
*盗人の言葉から、理由となる部分を探していくと
 「なみなみの人のものは、主の嘆き深く、取り得て侍るにつけて、ものぎよくも覚え

 侍らねば」
  (一般の人の物は、私が盗むと持ち主はは暮らしに困り嘆きが深く、盗むことができ

 たにしましても、潔癖だとも思いませんので) 
  ↓
*つまり庶民の物を盗むのは忍びないと言っている。さらに、この後
 「かたじけなくもかく参りて」
   (畏れ多くもこのように(皇帝陛下のもとへ)参上して)
  ↓
*盗人は、大きな財産をもっている皇帝から盗むほうが、貧しい一般庶民から盗むより

 道理にかなっている、と考えたことが分かる。
正解:「ロ」 「イ」は盗人の言葉と合致するが、設問の答えになっていない。

問十六(マーク・選択)
*空欄補充問題。皇帝が盗人の言葉を聞いて感動している場面である。
 「汝は盗人なれども(D)」「我、王位にあれども(E)」
   ↑
*両方とも逆接「ども」があることをヒントにして、対比表現の語を選択する。
正解:D=「イ」 E=「ロ」

問十七(マーク・選択)
*人物判定問題。まず、傍線部を含む文の口語訳を検討すると
  「しかれば、上人の身命を捨てしも、他に勝れ、名聞を先とす。貧者が財宝を盗める

  も、清くうるはしき心あり」
 (このようであるので、上人が命を捨てたことは、他の者より勝とうとし対面を優先

     している。貧しい者が財宝を盗んだのも、汚れのない誠実な心がある。)
  ↓
*以上から、「上人」=西尾の聖、「貧者」=盗人であると判断できる。これも落とし

 たくない問題。
正解:3「イ」 4「ホ」


第三問(漢文) 予想8点 (各2点と予想)
*問題文は清代の随筆。かつて商学部は、漢詩と漢文が交互に出題され、古文との融合

 問題が主流であったが、近年は漢文の単独問題が出題されている。漢文読解の基本で

 ある「解答は傍線部の外にある」「対句(対比)構造に留意して読む」ということを

 心がけたい。
★古文と同様に、最初にリード文、注、設問に目を通して情報を手に入れる。
★問題文には注番号が附されていないので、最初にチェックして語を囲むなどマークを

 しておくと良い。

 問十八(マーク・選択)
*空欄補充問題。                       1
  (A) 無 銭 財 自 贖、又 無 一 芸 可 供 爾 用
  ↑
*「(A)無銭財自贖」と「又無一芸可供爾用」が対句になっているので、空欄(A)

 と「又」も対句表現である。
*ここの部分の意味は、「私は(A)金銭を自分で手に入れることができず、またあな

 たに提供することができる一芸もない」となるだろう。本文一行目で「赤貧」「日行

 乞於市」と書かれていることから朱了頭は乱徒に誘われた時点で一文無しであること

 が分かる。
*そこで(A)に「既」を入れてみると、「既~、又~」という累加の並列表現(既に

 ~だけでなく、さらに~だ)が成立する。内容的にも問題ない。
正解:「ハ」
 イ「況」・・・抑揚(まして~) 

 ロ「雖」・・・逆接仮定条件(~としても) 

 ニ「仮」・・・仮定(もし~) 
 ホ「猶」・・・(やはり)

問十九(マーク・選択)
*読み方の問題。思考のプロセスは次の通り。
①問十八からわかるように傍線部は累加の並列表現に続く部分である。従って「ニ」 

 「ホ」のような禁止表現とはならない。
②累加の並列表現は「既~X~、又~Y~」のXとYが並列、類似的な構造になってい

 ることが原則なので、傍線部は「無銭財自贖」と同じ構造になっていると考える。
「可」は可能の助動詞で、直下の動詞から返って読む。従って「供すべし」と読む

 ずである。
④「供」は「爾用」から返って読む。「爾」=「あなた」なので、「爾の用に」と読む

 ことから、「ハ」が除外される。
⑤「銭財」と対応する名詞は「一芸」と推測されるので、「イ」のように「いちげいも

 なく」とは読まない。
正解:「ロ」

問二十(マーク・選択)
*返り点の問題。単純に二重否定「不~不~」の形から解答はできない。思考のプロセ

 スは次の通り。
①傍線部の前後を検討すると、
 汝 既 丐 也。饑 寒 之 困 甚 矣。従 我 去
     (あなたは既に乞食だ。飢寒の苦しみは甚大だ。私に従って行くのなら)
  不 憂 不 富 貴
  ↓
 朱 怒 曰、「我 惟 甘 饑 寒、故 丐 耳。否 則 為 竊 為 盗     胡 不 可。」
  (朱は怒って言った。「私はただ飢寒に甘んじて乞食をしているにすぎない。乞食を 

 しないのなら盗みを働くことができないことがあろうか、いや、できる。)
  ↓
*つまり、「あなたについて行き盗賊になれば、富貴になれる」という解釈が成り立

 つ。
②次に傍線部の語句を検討すると、「富貴」(=富も地位もあること)は一つの単語な

 ので、これを分けて読んでいる「イ」「ホ」は誤り。
③「ロ」は「憂へずんば富貴とならず」(心配しないのなら富貴にはなれない)と読

 め、前後の文意に合わない。
④「ハ」は「憂へ富貴とならずんばあらず」(心配ごとは富貴となれないことではな

 い)と読め、前後の文意に合わないし、意味不明。
⑤「ニ」は「富貴とならざるを憂へず」(富貴にならないことを心配する必要はない)

 と読め、前後の文脈と合致する。傍線部が盗賊の言葉であることもヒントになる。
正解:「ニ」

問二十一(マーク・選択)
*内容合致の問題。朱了頭の発言の続きを確認すると、末尾の言葉が反語になっている

 ことに注意する。
  乃 従 爾 等 作 賊 乎。
  (それならどうしてあなたたちに従って盗賊となることがあろうか、いやない。)
  ↓
*ここから、朱了頭は「盗賊になるくらいなら飢寒に身をさらしてでも乞食のままでい

 たい」と考えていることが分かる。
*この後、朱了頭は
  遂 見 害。
*つまり盗賊に殺されてしまう。そして筆者は彼について
  有 古 烈 士 風 矣。
   (古の烈士のごとき人物である。)
*「烈士」とは強い信念を持って、勇ましく活動する者のこと。
正解:「イ」
 「ハ」・・・後半の「烈士の如く飢寒を凌ぐだけで充分」が誤り。
 「ニ」・・・「窃盗行為を指弾」「自らの尊い命を絶って」「後世に名を残す」が誤

       り。