2026年度 東大国語 第二問 古文 「狭衣物語」(文30点 理20点)
★東大の古典で要求されていると考えられる力
①現代語訳の力
→直訳・逐語訳が基本だが、適宜言葉を補ったり意訳したりして整える必要もあると考
えられる(最終的に、内容が読み取れていることが示せなければ評価されない)。
現代語訳の問題を含めて全ての設問の根底にこの現代語訳がある。
②基本的な読解力
→主語判定の技術(敬語や接続助詞に適宜着目する)や和歌の読解の技術などがしばし
ば要求される。
③背景知識(文学史や古典常識)や文章構造(対比・対応など)から細部を推理する力
④設問への対応力
→設問の要求にきちんと答えて答案を作る力(→対話能力)と、設問のタイプに応じて
合理的に解答を導いていく力とに分けられる。
⑤総合的な言語運用能力
→自分が使う言葉を客観視できるかどうか(きちんと相手に伝わる表現になっているか
どうか)、「言葉の位相」を的確につかんだ上で語句の意味、内容を読み取ったり、答
案をまとめたりできるかどうかなど。
【出典】「狭衣物語」
*東大古文の出題は、ほぼ中古、中世の作品(「源氏物語」かその前後、周囲の作品が
多い)である。
*今回の作り物語「狭衣物語」についての文学史的な知識、概要(源氏物語の影響を強
く受けている等)についてはあらかじめ知っておきたい。有名作品なので。
*飛鳥井の女君という恋人を失った狭衣大将の悲嘆、夢に出てきた飛鳥井の女君の和歌
とそれに対しての大将の反応などが読み取れるかどうか。
*難易度は前年より易化した。取れるところで確実に得点することが求められる。
*なお、河合塾の浪人生用テキストに全く同じ文章が掲載されている。
(一) 傍線部ア・イ・エを現代語訳せよ。(10点)
*東大の現代語訳の問題は、基本的に、(一)が指示なしの現代語訳、それ以外は指示付
きの現代語訳である。指示なしだからといって、言葉を補う必要がないというわけで
はない。採点者に内容が読み取れていることを伝えるのが第一義である。
*なお、今年は前年同様指示付きの現代語訳は出題されず、(一)以外はすべて説明問題
であった。
*すべて基本的な単語、文法の理解を問う問題なので、確実に得点したい。
ア「なべてならずせさせ給ふ」
①「なべてならず」=並一通りでなく/並々でなく
②「させ」は使役。準備をするのは大将ではなく下々の者であると考える。
③並々でなく何をするのかと言えば、「経」、仏の御飾りを」であるので、「立派に」と
補う。
〈解答例〉
並々でなく(並一通りでなく)立派に させ なさる(おさせになる)。 (3点)
→3点=①②③・・・各1点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
並々でなく立派におさせになる。
〈K校〉
並一通りでなくさせなさる。
〈T校〉
並々でなく盛大に飾り付けさせなさる。
イ「袖濡らさぬ人もありがたげなる」(3点)
①「袖濡らす」=涙で袖を濡らす
②「ぬ」=打消の助動詞「ず」連体形。
③「ありがたげなり」=めったにいない様子である
〈解答例〉
涙で袖を濡らさ ない人も めったにいない様子である。 (3点)
→3点=①②③・・・各1点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
涙で袖を濡らさない人もいなそうである。
〈K校〉
涙で袖を濡らさない人もめったにいない様子である。
〈T校〉
涙で袖を濡らさない人もめったにいないようである。
エ「えまねばぬは、なかなかかひなし」
①「え~打消(「ぬ」)」=~できない
②「まねぶ」=そのまま人に伝える
③「なかなか」=かえって(逆接)
④「かひなし」=効果がない/無駄である/かいがない
〈解答例〉
そのまま伝える ことができない のは、かえって 語る甲斐がない 。 (4点)
→4点=①②③④・・・各1点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
そのまま語ることができないのは、かえって語り甲斐がない。
〈K校〉
そのまま伝えることができないのは、かえって語る価値がない。
〈T校〉
そのまま書き伝えられないのは、むしろ不甲斐ないことだ。
(二) 「げに口惜しかりける命のほどかな」(傍線部ウ)とはどのような心情か、説明せ
よ。(文科のみ 5点)
*心情説明問題。傍線部の解釈は「本当に残念な寿命の短さだなあ」となる。
*「誰の寿命か」→飛鳥井の女君の寿命。
*「げに口惜し」とは何が残念なのか、傍線部の前の部分を拾っていくと
「誰ならん、いとかばかり思されたりけるは」
(=これほどまでに大将からお思いになっていただいたのはどなただろうか)
「まいて大将の御直衣の袖は絞るばかりにもなりぬべし」
(=まして大将の着ている直衣の袖は、涙で絞れるほどまでになってしまうにちが
いない)
↓
*整理すると
①.大将が非常に悲しんでいるくらい
②.大将から愛された女性が
③.短命であったことを
④ 残念に思っている
↓
*以上の内容を整理して統合する。解答欄は一行なので、30字程度で解答する。
*説明問題なので、一般化(客観化)し、結論的に説明し、傍線部「口惜し」の解釈で
着地する。
〈解答例〉
大将が非常に悲しむくらい愛された女性が短命だったことを残念に思う心情 。
→5点=①②④・・・各1点、③・・・2点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
狭衣大将の悲しむ様子になるほど相手の女性が短命だったのは残念だと思う心情。
〈K校〉
故人が大将に深く愛されていながら早世したことを残念に思う心情。
〈T校〉
大将に深く思われながらも亡くなってしまった人の死を、人々が惜しむ心情。
(三)「ただありしさまにて、かたはらに居て」(傍線部オ)とはどういいうことか、状
況が分かるように説明せよ。
(文科のみ5点)
*内容説明問題。傍線部の解釈を最初に行い、女性が大将の夢枕に立った事実を説明す
る。
◆状況の確認
傍線部の直前に、「やがて端にうち休みて、まどろみ給へる」とあるので、大将はそのまま居眠りをした。
↓
接続助詞「に」で主体が変わるので、大将の夢の中に「ありしさまにて」(=生前と変わらない様子で)誰かが出てきた。
↓
その人物はリード文から飛鳥井の君と予想されるが、念のため傍線部の後を見ると、歌の後に
「と言ふさまの、らうたげさもめづらしうて」
(=と詠む様子の、可愛らしさもすばらしくて)
↓
「らうたし」は女性や子どもに対して用いる形容詞なので、傍線部の主体は飛鳥井の君とわかる。
◆傍線部の解釈
「飛鳥井の女君がただ夢の中で生前と変わらない様子で、大将の傍らに座って」
↓
①大将の夢の中で
②飛鳥井の女君が
③生前の姿のまま
④大将の傍らに座っていた
*以上の状況を、客観的に解答する。解答欄は一行なので、30字程度で解答する。
〈解答例〉
大将の夢の中で、飛鳥井の女君が生前の姿のまま大将の傍らに座っていたということ。
→5点=②③④・・・各1点、①・・・2点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
狭衣大将の夢の中で、飛鳥井の女君が生前の姿で大将の側に座っていたということ。
〈K校〉
飛鳥井の女君が夢に現れ、生前の姿のまま大将の側に座っているということ。
〈T校〉
大将の見た夢で、生前の姿のままの女君が傍らに座っていた、ということ。
(四)「とふにぞかかる光をも見る」(傍線部カ)とはどういうことか、説明せよ。
(5点)
*内容説明問題。文脈から「とふ」の意味、「かかる光」の内容を検討する。
◆状況の確認
1.大将は亡くなった飛鳥井の女君の一周忌の法要を行った
「暁にもなりぬらんとおぼゆるまで居明かし給ひて」
(=大将は夜明け前にもなるに違いないだろうと思われる頃まで一晩中座っていらっ
しゃって)
↓
2.法要の終わった翌日未明に、飛鳥井の女君が大将の夢枕に立った
↓
3.傍線部を含む飛鳥井の女君が詠んだ和歌の解釈。二句切れ、三句切れの歌である。
「暗きより暗きに惑ふ」
=「暗い迷いの道から、さらに暗い迷いの道へと迷っている」
「死出の山」=「冥土にあるという険しい死出の山で」
「とふ」=「訪ふ」=「訪問する・見舞う」/「弔ふ」=「弔う・供養する」
↓
*飛鳥井の女君の法要を行ったことから、「とふ」=「供養する」の意味と解釈する。
「とふにぞかかる光をも見る」
=「あなたが私を供養してくださるので、このように仏の救いの光を見ることもでき
る」
↓
4.リード文から、女君は愛した大将に知られることなく亡くなり、迷いの道をさまよ
っていた。
↓(しかし)
①大将が法要を行ってくれたおかげで、
②成仏することができたと
③感謝を伝えに来た
↓
*以上をまとめる。解答欄は一行なので、30字程度で解答するが、収めるのに時間がか
かるかも知れない。
〈解答例〉
大将の供養のおかげで、自分は成仏することができ感謝しているということ。
→5点=①②各・・・2点、③・・・1点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
狭衣大将が手厚く弔ってくれるおかげで、自分は成仏できそうだということ。
〈K校〉
大将が盛大に営んだ法要のおかげで、自分は成仏できるということ。
〈T校〉
大将が弔ってくれたので、成仏に導く光を見ることができた、ということ。
(五)「経を読み給ふ」(傍線部キ)とあるが、それはなぜか、直前の和歌の内容を踏まえ
て説明せよ。(5点)
*理由説明問題。解答の方針は以下の通り。
1.直前の和歌の内容の解釈。
2.傍線部直前の「枕浮き給ひぬべき心地して」(=枕が涙で浮いてしまいそうなほど
悲しい気持ちが湧きなさって)の理由を考える。
3.その上で大将がなぜ経を読んでいるのかを考える。
◆直前の和歌の内容の解釈(二句切れと判断)
「後る」=「後に残される/先立たれる/先に死なれる」
「じ」=打消意志の助動詞「~まい/~しないようにしよう」
「契る」=「約束する/変わらぬ愛を誓う」
「ものを」=逆接+詠嘆の接続助詞「~のになあ」
「三瀬川」「三途の川」(註)
「や」=疑問の係助詞
「わたる」=時間の継続を表す補助動詞「~し続ける」
「らん」=現在推量の助動詞「今頃は~しているだろう」
①先立たれないようにしようと約束したのになあ。女君は死出の山へ旅立ち、今頃三途
の川で私を待ち続けているのだろうか。
◆「枕浮き給ひぬべき心地して」(=枕が涙で浮いてしまいそうなほど悲しい気持ちが
湧きなさって)の理由
②死ぬときは一緒だと約束していたので、一人先立ってしまった飛鳥井の女君が、自分
のことを三途の川(=あの世へ行く途中)で待ち続けていると思ったから。
◆大将が経を読んでいる理由
③成仏できないでいる飛鳥井の女君の冥福を祈るため。
↓
*①②③をまとめる。解答欄は一行なので、30字程度で解答する。
和歌の後半の解釈から、女君が成仏できていないと分かるかがポイント。思い切って
このくらいに圧縮してよい。
〈解答例〉
自分への思いを残し成仏できずにいる飛鳥井の女君の冥福を祈りたいから。
→5点=「自分への思いを残し」・・・2点、「成仏できずにいる飛鳥井の女君」・・・2点
「冥福を祈りたい」・・・1点(減点法)。
その他の不備は適宜1〜2点減点。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
自分への未練で成仏できないかもしれない飛鳥井の女君の冥福を祈りたいから。
〈K校〉
大将は、飛鳥井の女君に自身への執着を捨てて成仏してほしいと思ったから。
〈T校〉
女君が三途の川で大将を待ち続け、冥土に行けずにいると哀れんだから。
現代語訳
年末に、狭衣大将はあの方(=女君)の一周忌の法要を執り行わせなさった。女君への愛情の証としては、法要を厚く催すことの他に何ができるか。いや、何もできることはない、とお思いになるので、経典や仏像の御飾りなどを、並々でなく立派に準備なさる。何事も、本当にその日のうちに成仏して極楽往生できそうなほど完璧に、取り計らいなさった。その当日、大将はひどく人目につかないように隠れて、大将ご自身が法要の場所へいらっしゃった。講師を務める僧は、比叡山の座主であった。招かれた僧六十人、七僧なども、並んで座っている。
法要がとても盛大で尊いことにつけても、「亡くなったのは素晴らしい人だったのだなあ。大将にこれほどまでに大切に思われなさっていたことよ」と思って見る人が多い。そんなにも立派なご様子で、泣きながらお読みになる願文の文章の悲しさは、涙で袖を濡らさない人もめったにいなさそうなほどであるので、まして大将の着ている直衣の袖は、涙で絞れるほどまでになってしまうにちがいない。それというのも実は、大将も「人目にも私の心が弱いと思われるだろうか」とお思いになって、堪え忍ぼうとなさらないわけではないけれども、ただふと聞こえる詩文集や物語、古歌なども、自分の思いに重なる方面であるものは、格別に目が留まって、しみじみと心を動かされるものなので涙が止まらないのであるにちがいない。拝見する人々なども、「これほどまでに大将にお思いになっていただいたのはどなただろうか、これほどまでに大将から愛しく思われていた人は。本当に残念な寿命の短さだなあ」と、見て驚かない者はいない。いろいろと尊い供養の事柄は多いけれども、そのまま書いて伝えることができないのは、かえって尊いことが無いよりも残念なことだ。
法要が終わって、僧も人々も退出してしまったけれども、大将ご自身はお残りになって、尼君とお会いになり、尽きることのない女君への愛情を感じなさった。日没を告げる入相の鐘の音がかすかに聞こえてくる、夕暮れの空の様子は、場所柄もあって、言いようもなく心細く感じられるのを、大将が簾をかき上げて、しみじみと物思いにふけって眺めなさって、勤行をなさっている様子は、とても尊く、しみじみとした風情がある。
大将は夜明け前にもなっただろうかと思われる頃まで一晩中座っていらっしゃって、度を超して苦しいので、そのまま部屋の端でちょっと休んで、うとうとなさっていると、夢の中で女君が生前と変わらない様子で、大将の傍らに座って、このように言う。
暗い迷いの道から、さらに暗い迷いの道へと迷っている。冥土にあるという険しい死出の山で。あなたが私を弔ってくださるので、このように仏の救いの光を見ることもできます。
と言う女君の様子が、可愛らしいさまであるのも、めったにないほど素晴らしくて、「何か言おう」とお思いになるうちに、はっと夢から覚めて空を見上げなさると、月が澄んで高く上っており、月の光だけが大将の顔に映っていた。雲の果てまで、はっきりと一面に澄んでいる空の景色は、普通の目覚めにでさえ、心細くなってしまいそうな空の様子なので、女君が傍らにまだいらっしゃるような気がして、自然と見渡すけれども、人々は皆、遠くへ下がって、とてもぐっすりと眠っている。
大将は一人でしみじみと空を眺めなさって、女君が今ごろ泣きながら越えているだろう死出の山道まで思いを馳せなさると、ひたすら女君と初めて出会った折にあの吉野の山で女君の気持ちを確かめるために、あえてつれなくしたことを、女君が恨めしそうに思っていた様子などが、心が惹かれるように感じられたことも、今しがた目の前で向かい合っているように自然と思い出しなさって、
死に遅れまいと約束したのになあ。女君は死出の山か三途の川で、私を待ち続けているのだろうか
と思いを馳せなさっても、枕が涙で浮いてしまいそうなほど悲しい気持ちが湧きなさって、女君の供養のためにお経を読みなさる。
第三問(文30点 理20点)・・・現代語訳・書き下し文は省略
【出典】白居易『双石』
白居易の五言古詩。漢詩の出題は十年ぶり。世間では評価されない石を愛して側に置いたことを詠じている。
例年同様、対句表現を意識した出題になっている。
2016年の漢詩を解いていた受験生は、非常に参考になった。
(一)傍線部b・d・eを平易な現代語に直せ。(理・文とも12点)
b 「遺水 浜」 (水浜に遺され)
*傍線部の直前は「万古より」(=大昔から)であり、傍線部の後は「一朝入吾手」(一
朝にして吾が手に入る)なので、「あっという間に/たやすく手に入れた」というこ
とになる。
*傍線部aも確認すると
「俗用無所堪 時人嫌不取」(俗用に堪ふる所無く 時人嫌ひて取らず)
(=日常生活には役立たずで、世間の人は嫌って手に取ろうとしない)
↓
*つまりこの「双石」(厥)は作者が見つけるまで長い間放っておかれたのである。
*そこから「遺」は「のこる」と読み、「水浜」が場所なので「水浜に遺され」と読む
のが妥当だろう。
*「水浜」=「浜辺」。「遺る」は「残る」と書き換える。
*さらに、この「水浜」は「註」より湖だと分かるので、解答に反映させる。
〈解答例〉
湖の水辺に残されて/湖の水辺に捨て置かれ (理・文とも4点)
→4点=「湖の水辺」・・・2点、「残されて/捨て置かれ」・・・2点。
〇設問のポイント(採点の基準)
1「遺」を「のこる」と読み、文脈から受身と判断すること。
2「水浜」を「水辺」と訳せること。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
水辺に残されていて
〈K校〉
湖の水辺に捨て置かれ
〈T校〉
水辺に放っておかれていたが。
d 「求 其 偶」 (其の偶を求む)
*傍線部の前句と傍線部を含む句を検討する。ここは対句表現になっている。
「人皆有所好」(人皆好む所有り)
(=人は皆それぞれ嗜好があり)
「物各求其偶」
(=物はそれぞれその偶を求める)
*「其」は「物」を指す
*「偶」とは「其の偶」であるので、「仲間」という意味であろう。(→「配偶者」)
*前句との関係を考慮すれば、「自分に合った仲間」ということになる。
〈解答例〉
自分に合った仲間を求める (理・文とも4点)
→4点=「自分に合った」・・・2点、「仲間」・・・2点。
〇設問のポイント(採点の基準)
1「偶」=「仲間」と訳出できたか。
2前句との関係から「自分に合った」と補えたか。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
自分に合う仲間を求める
〈K校〉
自分の相棒を探し求める
〈T校〉
仲間を求めるものだ
e 「不容」 (容れず)。
*傍線部の前句を見ると
「漸恐少年場」(漸く恐る少年の場)
(=若者の集まり)
*傍線部を含む句全体は
「不容垂白叟」(垂白の叟を○○○)
↓
*前句と傍線部を含む句が倒置の関係になっており、さらに「少年場」と「垂白叟」が
対句になっている。
*「容」は上に「不」があるので動詞として「いる」と読む。
*従って「不容」=「容れず」と読む。
↓
*さらに、傍線部を含む句が倒置であることを考慮すれば、傍線部は「恐」の目的語であると判断して、
「容れざるを」と読むべきである。
*「容る」=「受け入れる・容認する」
*つまりこの二句は、「若者が集まるところでは、「垂白叟」=老人=「私」など受け入
れてもらえないことを恐れる」という意味になるだろう。
〈解答例〉
受け入れないのを (理・文とも4点)
→4点=「受け入れない」・・・3点、「のを」・・・1点(減点法)。
〇設問のポイント(採点の基準)
1「不覚」と「不知」は同じ意味だと理解できたか。確実に得点したい。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
受け入れてくれないのを
〈K校〉
受け入れてくれないことを
〈T校〉
受け入れてくれないことを
(二)「俗用無所堪時人嫌不取」(傍線部a)とはどういうことか、簡潔に説明せよ。
(文6点・理4点)
*傍線部の読み方は「俗用に堪ふる所無く 時人嫌ひて取らず」
*傍線部の訳は「日常生活では役立たずで、世間の人は嫌って手に取ろうとしない」
*主語は「厥」=「双石」。
*傍線部の前の二句は
「蒼然両片石 厥状怪且醜」(蒼然たり両片の石 厥の状怪且つ醜)
(=古びた二つの石は怪しくて醜い)
↓
*つまり傍線部は、このような石は日常生活に役に立たず、誰も顧みる人はいなかった
ということ。解答欄は1行なので、30字程度で解答する。
〈解答例〉
二つの石は日常生活に役に立たず、誰も顧みる人はいなかったということ。
(文6点・理4点)
→6点=「二つの石」・・・2点、「日常性生活に役に立たない」・・・2点、
「誰も顧みる人はいない」・・・2点(減点法。
〇設問のポイント(採点の基準)
1 「俗用」「無所堪」「時人」「不取」の解釈ができたか。
2 現代語訳を一般化して解答できたか。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
役立たず、世の人が見向きもしないということ。
〈K校〉
二つの石は一般の役に立たないため、普通の人は関心を示さないということ。
〈T校〉
石は実生活には役に立たず、世の人も嫌がって手に触れないということ。
文(三)「不レ似二人間有一」(傍線部c)とはどういうことか、わかりやすく説明せ
よ。
*傍線部の読み方は「人間(じんかん)に有るに似ず」。
*傍線部は直前の「忽ち疑ふ天上より落つるかと」
(=天上界から落ちてきたのかとすぐに疑った)
と対をなしている。
*「人間」じんかんの解釈
・・・漢詩における「人間」は、現代日本語の「ヒト」ではなく、「人の住む世の中」
「俗世間」を指す。この石が俗世離れした美しさを持っていることを強調してい
る。
↓
*従って傍線部の直訳は「人間世界にあるものには似ていない」となる。
↓
*これを一般化し、対句を意識して説明する。解答欄は1行なので、30字程度で解答す
る。
〈解答例〉
石は天上界のもので、とても人間世界のものとは思えないということ。(文6点)
〇設問のポイント(採点の基準)
1対句を意識できたか。
2「人間」を「じんかん」として解釈できたか。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
人の世界に存在するものとも思えないということ。
〈K校〉
奇怪な石は天のもので、人間世界のものとは思えないということ。
〈T校〉
人間の世界にあるものとは思えない不思議な様だということ。
文(四)・理(三)「能伴二老夫一否」(傍線部f)について、「老夫」の指すところを明らか
にして、平易な現代語に直せ。 (6点)
*傍線部の読みは「能く老夫を伴ふや否や」となる。
*「能」は可能の助動詞。「~否」は疑問。「老夫」については、前行の「垂白叟」の言
い換えで、作者自身を指す。詩や随筆では、作者を遠回しな言い方をする。2016年の
過去問題が参考になる。
*前句の「廻頭問双石」(頭をめぐらして双石に問ふ)と、
*最終句の「許我為三友」(我を許して三友為らしむ)
(=私を加えて三人の友(自分と二つの石)になることを許してくれた。)から、
*作者は石を擬人化していることがわかる。ここまで分かれば簡単。「平易な」とある
ので、石に語りかけるような解答にするのがいいだろう。
〈解答例〉
石よ、おまえはこの年老いた私を仲間に入れてくれるかどうか。(6点)
→6点=「年老いた私」・・・2点、「仲間に入れてくれるか」・・・2点、
「どうか」・・・2点。
疑問文になっていなければ0点。石に呼びかけていない解答はマイナス1点。
〇設問のポイント(採点の基準)
1疑問文にすること。
2石に呼びかける形になっていること。
3「老夫」を「年老いた私」と解釈していること。
4「伴」を「友人」「仲間」と解釈していること。
参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
老いぼれの私を仲間に加えてくれるかどうか。
〈K校〉
石よ、おまえたちは老いぼれである私白居易の友人になってもらえるか。
〈T校〉
この老いぼれた私、居易を仲間に入れてくれようか。
*基礎的な句形のゆるぎない理解と、語彙力以上に文中の語意を正しく把握する力を駆
使し、文章全体の中での傍線部として矛盾のない解釈と説明を求めている。