「天晴」塾~大学受験国語~

難関大学を中心に国語の入試問題を解説します。

大学受験塾「天晴」 ~国語の入試問題解説~

 こんにちわ。大学受験「天晴」塾にお越しいただきありがとうございます。

 本サイトは国語の大学入試問題(現代文、古文、漢文)の解答と解説を行います。

講師プロフィール

 長年、公立高校で教鞭を執り、現在は予備校の講師をしています。偏差値40から東大の推薦入試指導まで、柔軟に対応します。

既存の受験サイトとの相違点

 大手の予備校発表の解答解説は、オフィシャルな立場としての発表なので、どうしても解答が難解なものになってしまいがちです。

 そこで「天晴」塾では、受験生が入試本番において緊張状態の中であることを想定し、「この程度の答案が書ければ十分だ」というレベルの解答解説を掲載します。

 手始めに今週の東大入試国語の第1問の解答解説を掲載しました。御覧下さい。

backbeat.hatenablog.com

2026年度 京都大学国語第1問 坂口安吾「恋愛論」

 こんにちは。大学受験「天晴」塾のbackbeat-akaです。

 2026年度京都大学第1問を掲載します。

 今回も随筆で、難易度は例年並みでした。

 ただ例年同様、制限時間内に考えをまとめて解答するのがすごく大変です。

 十分なトレーニングが必要です。本ブログにも京大の過去問題をいくつか掲載していますので、是非ご活用ください。

 

backbeat.hatenablog.com

2026年度 京都大学国語第1問 解答解説

2026年 京都大学 第一問 坂口安吾「恋愛論」(文50点・理40点)
                             
第一意味段落(①)
①    切支丹の渡来・・・(1)愛という言葉で非常に苦労した
     西洋・・・愛す=好む
  日本の武士道・・・色恋=不義/恋愛=よこしまなもの
  ↓
  切支丹・・・愛を説く
  日本・・・愛は不義につらなるニュアンスが強い→訳語に困惑
  ↓
     苦心のあげくに発明した・・・大切という言葉/愛す→大切に思うと訳した
第二意味段落(②~⑤)
② 今日の日常の慣用/愛とか恋は何となく板につかない言葉の一つ

③ 日本の言葉・・・明治以来、外来文化に合わせて間に合わせた言葉が多い
         言葉の意味と、それがわれわれの日常に慣用される言葉のイノチがま

         ちまち
         同義語が多様/境界線の不明確な言葉が多い
   ↓
  (2)これを称して言葉の国というべきか、われわれの文化がそこから御利益を受け

    ているか、私は大いに疑っている  
④ 惚れたというと下品/愛すというといくらか上品
  こう使いわけて、たった一字の動詞で簡単明瞭に区別がついて、日本語は便利のよ

  うだ
   ↓(しかし)
  私は(3)あべこべの不安を感じる
   ↓(すなわち)
  たった一語の使い分けによって、いともあざやかに区別をつけてそれですましてし

  まう
     物自体の深い機微、独特な個性的な諸表象を見のがしてしまう
   ↓(つまり)
     われわれの言葉は物自体を知るための道具だという考え方、観察の本質的な態度を

  おろそかにしてしまう
       ↓(要するに)
     日本語の多様性は雰囲気的でありすぎ
   ↓(したがって)
  日本人の心情訓練をも雰囲気的にしている
  万事雰囲気ですまして卒業したような気持になっている
  原始さながらのコトダマのさきはふ国に、文化の仮衣装をしている 

⑤ 人は恋愛というものに、特別雰囲気を空想しすぎている
   ↓(しかし)
     恋愛は、言葉でもなければ、雰囲気でもない/ただ、すきだ、ということの一つ
        ↓
  すきだ、という心情に無数の差/雰囲気ではない
第三意味段落(⑥~⑮)
⑥ 恋愛は一種の幻影で、必ず亡び、さめるものということを知っている大人の心は不

  幸なもの
   ↓
⑦ 若い人たち・・・情熱の現実の生命力がそれを知らない

  大人・・・情熱自体が知っている

⑧ 年齢には年齢の花や果実がある
   ↓
  恋は幻にすぎないという事実

  ・・・若い人は、ただ、承った、ききおく、という程度でよろしい

⑨ ほんとうのこと・・・(4)ほんとうすぎるから、私はきらいだ
     あたりまえすぎることは、無意味であるにすぎない

⑩ 教訓には二つある・・・先人がそのために失敗したから後人はそれはしてはならぬ
            先人はそのために失敗し後人も失敗するにきまっているが、だ

            からするなとはいえない
   ↓
⑪ 恋愛は後者に属する/それをしなければ人生自体がなくなるようなもの

⑫ 万葉集、古今集の恋歌などを、真情が素朴純粋に吐露されている

  ・・・高度の文学のようにいう
   ↑
  そういう素朴な思想が嫌い
 ↓(極端にいえば、) 
⑬ あのような恋歌は、動物の本能の叫び、犬や猫がその愛情によって吠え鳴く遺こと

  と同断

⑭ 恋をすれば・・・手紙を書かずにはいられない→猫の鳴き声と所詮は同じこと
  恋をすれば誰でもそうなる/きまりきったこと/勝手にそうするがいいだけの話

⑮ 初恋だけがそうなのではない/恋は常にそういうもの/純情でもなんでもない
第四意味段落(⑯~⑰)
⑯ (5)私たちが、恋愛について、考えたり小説を書いたりする意味
 ↓
⑰ 人間の生活

  ・・・めいめいが建設すべきもの

     努力の歴史的な足跡が、文化というものを育てあげてきた
      ↓(恋愛も同じ)
  本能の世界から、文化の世界へひきだし、めいめいの手によってこれを作ろうとす

  るところから、問題がはじまる
第五意味段落(⑱~⑳)
⑱⑲ (恋愛問題の例) 
 ↓
⑳ その解答・・・無理/知らない
  私自身が、私自身だけの解答を探しつづけているにすぎない


◎設問解説
*前年と同様に随想からの出題。愛という言葉に関する様々な場面において日本語と人

 間関係について考察する文章。

問一 傍線部(1)はどういうことか、説明せよ。(4行 10点)
*内容説明問題。第①段落にある、切支丹の「愛」と日本の「愛」との違いを明らかに

 し、当時の切支丹が「大切」という役にたどり着くまでの苦労をまとめる。
〈解答への道筋、思考のプロセス〉
①「あちらでは愛すは好む」
  「みな一様に好むという平凡な語が一つあるだけ」
  ↓
 「日本の武士道では、不義はお家の御法度」「色恋というとすぐ不義とくる」
 「恋愛はよこしまなものにきめられていて、清純な意味が愛の一字にふくまれておら

 ぬ」
  ↓
 「愛は不義につらなるニュアンスが強い」
     ↓
 「切支丹は愛を説く」「神の愛、キリシトの愛」
 「この訳語に困惑」
     ↓
  「苦心のあげくに発明したのが、大切という言葉」
  ↓
*整理すると
1.愛という言葉は
2.日本では不義につらなるニュアンスが強く、清純な意味が愛の一字にふくまれてい

  ない
3.切支丹=西洋では愛は好むという意味で使われており、
4,日本に渡来した切支丹は神やキリストの愛を説くのに愛という日本語が使えず、
5.苦心のあげくに大切という訳語を発明した
 ↓
*以上をまとめる。解答欄は四行なので、一行25字程度として100字前後で解答を作成

 する。

 〈解答例〉
 愛という言葉は日本では不義のニュアンスが強く、清純な意味が含まれないのに対し、西洋では好むという意味で使われており、切支丹は神やキリストの愛を説くのにこの訳語が使えず、苦心の末に大切という訳語を発明したということ。(106字)

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 愛という言葉は、日本では不義のニュアンスが強く、清純な意味を含まないのに対し、西洋では好むと同じ意味で捉えており、切支丹が神やキリストの愛を日本語で説く際に、愛という語が使えず、苦心して「大切」という語の発明に至ったということ。(113字)
〈K校〉
 日本に渡来したキリスト教徒は、神が万物を分け隔てなく純粋に慈しむことを意味する「愛」という語が、日本語ではよこしまな不義に連なる意味を持つために、苦心の末に「大切」という語を用いざるを得なかったということ。(102字)
〈T校〉
 切支丹にとって愛は純粋なもので、教義の中心概念であったが、布教当時の日本の武士道では、恋愛が不義につながる不純なものと認識されていたので、愛という翻訳語が使えず、苦心のあげく大切という訳語を生み出すことになったということ。(110字)

 

問二 傍線部(2)は筆者のどういう考えを示すのか、説明せよ。(4行 10点)
*内容説明問題。明治以来の日本の言葉に対する筆者の見解を説明する。解答範囲は第

 ③段落~第④段落。
〈解答への道筋、思考のプロセス〉
◆「これを称して」の意味内容
③「日本の言葉は明治以来、外来文化に合わせて間に合わせた言葉が多い」
   「言葉の意味と、それがわれわれの日常に慣用される言葉のイノチ(=心情)がまち

 まち」
  「同義語が多様」「境界線の不明確な言葉が多い」
 ↓
★日本の言葉は明治以来、言葉の意味と、それがわれわれの日常に慣用される言葉の意

 味がまちまちで、同義語が多様で境界線の不明確な言葉が多い・・・解答要素(X)
◆「私は大いに疑っている」からうかがえる筆者の考え
④「われわれの言葉は物自体を知るための道具だという考え方、観察の本質的な態度を

 おろそかにしてしまう」
  「日本語の多様性は雰囲気的でありすぎ」
  ↓(したがって)
 「日本人の心情訓練をも雰囲気的にしている」
 「万事雰囲気ですまして卒業したような気持になっている」
  ↓
★日本語の多様性は雰囲気的でありすぎるので、心情も万事雰囲気ですましてよい気持

 になる・・・解答要素(Y)
◆「文化」に関する説明に言及
③「日本の言葉は明治以来、外来文化に合わせて間に合わせた言葉が多い」
④「原始さながらのコトダマのさきはふ国に、文化の仮衣装をしている」
 ↓
★外来文化に合わせて間に合わせた日本の言葉は、借り物の文化である

 ・・・解答要素(Z)
 ↓
*(X)(Y)(Z)をまとめる。言葉と文化の関係を説明するのが難しい。
*解答欄は四行なので、一行25字程度として100字前後で解答を作成する。この程度の

 解答しかできないのではないか。

 〈解答例〉
 明治以来、外来文化に合わせて間に合わせた日本の言葉は、言葉本来の意味と日常で使う際の心情がまちまちで、同義語が多様で境界線の不明確な言葉が多く雰囲気的になり、日本人はそんな借り物の文化の中にいるという考え。(102字)

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 日本の言葉は、明治以来、言葉の意味とそれを日常で使う際の人々の心情の対応がまちまちであり、同義語が多様で境界線の不明確な言葉が多く、雰囲気的でありすぎることで、日本人を万事雰囲気だけで済ましてよいような気持ちにさせるという考え。(113字)
〈K校〉
 明治以来の日本語は外来文化を摂取し、深く考えもせずに案出された言葉があふれたために、意味の違いを区別できないまま曖昧に言葉を利用して却って苦労を強いられ、言葉の文化伝統に浴することなどできていないという考え。(103字)
〈T校〉
 近代以降の日本の言葉は、外来文化への対応に追われたせいか、日常的慣用語の意味と語の生気のずれや、多様な同義語の用法の境界の曖昧さが生じることとなったが、日本人はそんな借り物の文化的雰囲気の中に安住してしまっているという考え。(111字)


問三 傍線部(3)の「不安」とはどういうものか、説明せよ。(3行 10点)
*内容説明問題。傍線部のある第④段落を中心に、「あべこべ」という対比関係と「不

 安」の中身を説明する。
*「あべこべ」なので「逆に」「かえって」「反対に」等の語を用いる。(P)
*「不安」なので「危惧」「懸念」等の語を用いる。(Q)
〈解答への道筋、思考のプロセス〉
◆「あべこべ」という対比関係の説明
④「たった一字の動詞で簡単明瞭に区別がついて、日本語は便利のようだ」
    ↓(しかし)
 「たった一語の使い分けによって、いともあざやかに区別をつけてそれですましてしま

  うだけ」
 「物自体の深い機微、独特な個性的な諸表象を見のがしてしまう」
 ↓
★日本語の一語で事象を簡単明瞭に区別できる利点が、逆にそれですましてしまう

 ・・・解答要素(X)
◆「不安」の説明・・・マイナスの要素
④「物自体の深い機微、独特な個性的な諸表象を見のがしてしまう」
 「言葉は物自体を知るための道具だという考え方、観察の本質的な態度をおろそかに

  してしまう」
 ↓
★物自体の深い機微、独特な個性的な諸表象を見のがし、言葉は物自体を知るための道

 具であるという観察の本質的な態度をおろそかにしてしまうという危惧

 ・・・解答要素(Y)
 ↓
*(X)(Y)をまとめる。解答欄は三行なので、一行25字程度として75字前後で解答

 を作成する。こなれた解答例ではないがこの程度でよいだろう。

 〈解答例〉(75字)
 日本語の一語で事象を簡単明瞭に区別できる利点はかえって、物自体の深い機微や独特な個性的な諸表象を見逃し、観察の本質的な態度を疎かにしてしまうという危惧。

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 一語の使い分けで物事を簡単明瞭に区別する日本語の利点が、物自体の深い機微、独特な個性的な諸表象の見逃しと、物自体に即して正確に表現を考えることの軽視につながるという懸念。(84字)
〈K校〉
 僅かな語で多様な表現ができる日本語の都合のよさに安心してしまって、物事の本質を見極めを知るために言葉を正確に用いる訓練がなおざりになっているのではという不安。(78字)
〈T校〉
 複雑多様な事物事象を単純な語の使い分けで皮相的に分節化するような態度は、対象を正確に捉えて表現するという言葉の本質から日本人を遠ざけるのではないかという危惧。(78字)
 

問四 傍線部(4)のように筆者が言うのはなぜか、説明せよ。(3行 10点)
*理由説明問題。「ほんとうのこと」に対して筆者が「きらい」という理由は第⑫段落

 ~第⑭段落で述べられている。それぞれの内容を明らかにする。
〈解答への道筋、思考のプロセス〉
◆「ほんとうのこと」の内容
⑨「死んでしまえばそれまでだ・・・こういうあたりまえすぎることは、無意味であるに

 すぎない」
⑫「万葉集、古今集の恋歌などを、真情が素朴純粋に吐露されている」
  ↓
(万葉集、古今集の事例を一般化する)
★素朴で純粋な当たり前のこと・・・解答要素(X)
◆「きらい」という理由
⑨「こういうあたりまえすぎることは、無意味であるにすぎない」
⑫「そういう素朴な思想が嫌い」
⑬「あのような恋歌は、動物の本能の叫び、犬や猫がその愛情によって吠え鳴く遺こと

 と同断」
  ↓
 「それが言葉によって表現されているだけのこと」
  ↓
⑭「恋をすれば・・・手紙を書かずにはいられない→猫の鳴き声と所詮は同じこと」
  ↓
 「真実すぎるから特にいうべき必要はない」
  「恋をすれば誰でもそうなる」
  「きまりきったことだから、勝手にそうするがいいだけの話」
  ↓
★ほんとうのことは素朴で当たり前すぎるからそれ以上の意味はなく、特にいうべき必

 要はなく、真情が言葉によって表現されているだけであり、勝手にそうするがいいだ

 けのこと・・・解答要素(Y)
 ↓
*(X)(Y)をまとめる。一見、何を書いたらよいかわからないので、受験生は解答

 の方針を決めるのが難しい。
*解答欄は三行なので、一行25字程度として75字前後で解答を作成する。この解答もこ

 なれてはないが、受験生はこの程度しか書けないだろう。

 〈解答例〉(74字)
 ほんとうのことは当たり前すぎるのでそれ以上の意味はなく、素朴で純粋なだけの真情を言葉によって表現する必要はなく、勝手にそうするがいいだけのことだから。

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉                                           
 ほんとうのことは不変の、当たり前の事実であるだけで、それ以上の意味を含まず、ただ勝手にそうすればいいだけのことであり、素朴な、特に言葉で表現する必要のないことだから。(82字)
〈K校〉
 いずれそうなるとわかっている人生上の真実は、それを予め知っていたとしても、やはりそれに見舞われ後悔することが自明であるため、教訓としても意味がないから。 (75字)
〈T校〉
 本当のことは、結局は言葉にしても無意味な当たり前のことにすぎず、虚妄や幻と分かっていても生命力に根ざした情熱を注ぎ、人生をそれに賭けようとするのが人間だから。(78字)


問五 傍線部(5)について、筆者はどのように考えているか、説明せよ。

   (4行 10点)
*全体の内容説明問題。「恋愛」と「考えたり小説を書いたりする意味」についての筆

 者の見解を説明する。
*解答範囲は第⑯段落~第⑳段落が基本になるが、「小説を書いたりする意味」とある

 ので、筆者が言葉に関する見解を述べている第④段落~第⑤段落の内容にも言及した

 い。
〈解答への道筋、思考のプロセス〉
◆「恋愛」に対する筆者の見解
⑤「すきだ、という心情に無数の差があるかもしれぬ」
⑰「本能の世界から、文化の世界へひきだし、めいめいの手によってこれを作ろうとす

 るところから、問題がはじまる」
 ↓
★恋愛は本能の世界から文化の世界へひきだし、各々が作ろうとするところに問題が発

 生し、「すきだ」という心情には無数の差がある・・・解答要素(X)
 ↓
◆言葉についての筆者の見解
④「物自体の深い機微、独特な個性的な諸表象」
    「言葉は物自体を知るための道具だという考え方、観察の本質的な態度」
    ↓
★言葉は物を知るための道具であり、物の深い機微や独特な個性的な諸表象を表現する

 もの・・・解答要素(Y)
 ↓
◆「考えたり」についての筆者の見解
⑰「人間の生活とはめいめいが建設すべきもの」
   「そういう努力の歴史的な足跡が、文化というものを育てあげてきた」
 ↓
⑳「私自身が、私自身だけの解答を探しつづけている」
 ↓
★恋愛について小説を書く意味は、自分自身が自分自身だけの恋愛の解答を探し続ける

 ことにある・・・解答要素(Z)
 ↓
*(X)(Y)(Z)を表現を整えてまとめる。4行でまとめるのが難しい。
*解答欄は四行なので、一行25字程度として100字前後で解答を作成する。この程度の

 解答しかできないのではないか。

 〈解答例〉
 恋愛は本能の世界から文化の世界へと引き出し各個人が作るもので、その心情には無数の差があるが、恋愛について考え小説を書く意味は、事象を正確に表現しながら、自分自身が自分自身だけの解答を探し続けることにあると考えている。(107字)

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 恋愛は本能の世界から文化の世界へ引き出し、個人の努力で作るところに問題があり、その心情には無数の差がある。恋愛について考え、小説を書く意味は、それ自体に即した正確な表現を考え、自分自身が自分自身だけの解答を探し続けることにある。(113字)
〈K校〉
 文筆家が恋愛を主題にする意味は、動物的本能や万古不易な事実を描くことや、万人に通じる答を導出することではなく、書き手の生活や人生に即した真実を本質的に捉え表現しようとする人間特有の文化的営みだと考えている。(102字)
〈T校〉(112字)
 恋愛自体は本能に根ざす行為だが、個々人が人生を建設していく歴史的足跡としての文化的営為でもあり、そこに出来する人間の喜怒哀楽が生み出す様々な問題に正解などあり得ないが、自分なりの解答を模索するのが小説創作の意味だと考えている。

本文マーキング①

本文マーキング②

 

2026年東京大学国語古典問題 解答解説

 こんにちは。大学受験「天晴(あっぱれ)」塾のbackbeat-akaです。

 今回は2026年東大古文漢文を掲載します。

 例年に比べて、比較的平易な問題でした。

 第1問の評論文も取り組みやすく、東大受験生にとっては高得点の争いになったかもしれません。

 この年のトピックは、何といっても第2問の古文でした。

 なんと、河合塾の浪人生用のテキストと同じ文章(「狭衣物語」)が出題されていました。

 切り取られた部分もほぼ同じでした。

 河合塾のテキストを使用していた全国の受験生はさぞかしびっくりしたことでしょう。

 有利に働いたのは間違いありません。

 東大にしては珍しいことでした。

 (他大学ではよくあることです・・・)

 

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2026年東京大学国語第2問(古文)、第3問(漢文)問題 解答解説

 2026年度 東大国語 第二問 古文 「狭衣物語」(文30点 理20点)  

★東大の古典で要求されていると考えられる力
①現代語訳の力
→直訳・逐語訳が基本だが、適宜言葉を補ったり意訳したりして整える必要もあると考

 えられる(最終的に、内容が読み取れていることが示せなければ評価されない)。

 現代語訳の問題を含めて全ての設問の根底にこの現代語訳がある。
②基本的な読解力
→主語判定の技術(敬語や接続助詞に適宜着目する)や和歌の読解の技術などがしばし

 ば要求される。
③背景知識(文学史や古典常識)や文章構造(対比・対応など)から細部を推理する力
④設問への対応力
→設問の要求にきちんと答えて答案を作る力(→対話能力)と、設問のタイプに応じて

 合理的に解答を導いていく力とに分けられる。
⑤総合的な言語運用能力
→自分が使う言葉を客観視できるかどうか(きちんと相手に伝わる表現になっているか

 どうか)、「言葉の位相」を的確につかんだ上で語句の意味、内容を読み取ったり、答

 案をまとめたりできるかどうかなど。

【出典】「狭衣物語」
*東大古文の出題は、ほぼ中古、中世の作品(「源氏物語」かその前後、周囲の作品が

 多い)である。
*今回の作り物語「狭衣物語」についての文学史的な知識、概要(源氏物語の影響を強

 く受けている等)についてはあらかじめ知っておきたい。有名作品なので。
*飛鳥井の女君という恋人を失った狭衣大将の悲嘆、夢に出てきた飛鳥井の女君の和歌

 とそれに対しての大将の反応などが読み取れるかどうか。
*難易度は前年より易化した。取れるところで確実に得点することが求められる。
*なお、河合塾の浪人生用テキストに全く同じ文章が掲載されている。

(一) 傍線部ア・イ・エを現代語訳せよ。(10点)
*東大の現代語訳の問題は、基本的に、(一)が指示なしの現代語訳、それ以外は指示付

 きの現代語訳である。指示なしだからといって、言葉を補う必要がないというわけで

 はない。採点者に内容が読み取れていることを伝えるのが第一義である。
*なお、今年は前年同様指示付きの現代語訳は出題されず、(一)以外はすべて説明問題

 であった。
*すべて基本的な単語、文法の理解を問う問題なので、確実に得点したい。

 

ア「なべてならずせさせ給ふ」
①「なべてならず」=並一通りでなく/並々でなく
②「させ」は使役。準備をするのは大将ではなく下々の者であると考える。
③並々でなく何をするのかと言えば、「経」、仏の御飾りを」であるので、「立派に」と

 補う。
〈解答例〉
   並々でなく(並一通りでなく)立派に させ なさる(おさせになる)。 (3点)

→3点=①②③・・・各1点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 並々でなく立派におさせになる。
〈K校〉
  並一通りでなくさせなさる。
〈T校〉
  並々でなく盛大に飾り付けさせなさる。

 

イ「袖濡らさぬ人もありがたげなる」(3点)
①「袖濡らす」=涙で袖を濡らす
②「ぬ」=打消の助動詞「ず」連体形。
③「ありがたげなり」=めったにいない様子である
〈解答例〉
   涙で袖を濡らさ ない人も めったにいない様子である。     (3点)

→3点=①②③・・・各1点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 涙で袖を濡らさない人もいなそうである。
〈K校〉
  涙で袖を濡らさない人もめったにいない様子である。
〈T校〉          
  涙で袖を濡らさない人もめったにいないようである。

 

エ「えまねばぬは、なかなかかひなし」
①「え~打消(「ぬ」)」=~できない
②「まねぶ」=そのまま人に伝える
③「なかなか」=かえって(逆接)
④「かひなし」=効果がない/無駄である/かいがない
〈解答例〉
  そのまま伝える ことができない のは、かえって 語る甲斐がない 。  (4点)

→4点=①②③④・・・各1点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 そのまま語ることができないのは、かえって語り甲斐がない。
〈K校〉
  そのまま伝えることができないのは、かえって語る価値がない。
〈T校〉
  そのまま書き伝えられないのは、むしろ不甲斐ないことだ。


(二) 「げに口惜しかりける命のほどかな」(傍線部ウ)とはどのような心情か、説明せ

  よ。(文科のみ 5点)
*心情説明問題。傍線部の解釈は「本当に残念な寿命の短さだなあ」となる。
*「誰の寿命か」→飛鳥井の女君の寿命。
*「げに口惜し」とは何が残念なのか、傍線部の前の部分を拾っていくと
 「誰ならん、いとかばかり思されたりけるは」
  (=これほどまでに大将からお思いになっていただいたのはどなただろうか)
 「まいて大将の御直衣の袖は絞るばかりにもなりぬべし」
  (=まして大将の着ている直衣の袖は、涙で絞れるほどまでになってしまうにちが

  いない)
 ↓
*整理すると
①.大将が非常に悲しんでいるくらい
②.大将から愛された女性が
③.短命であったことを
④ 残念に思っている
 ↓
*以上の内容を整理して統合する。解答欄は一行なので、30字程度で解答する。
*説明問題なので、一般化(客観化)し、結論的に説明し、傍線部「口惜し」の解釈で

 着地する。
〈解答例〉
  大将が非常に悲しむくらい愛された女性が短命だったことを残念に思う心情 。

→5点=①②④・・・各1点、③・・・2点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 狭衣大将の悲しむ様子になるほど相手の女性が短命だったのは残念だと思う心情。
〈K校〉
 故人が大将に深く愛されていながら早世したことを残念に思う心情。
〈T校〉
 大将に深く思われながらも亡くなってしまった人の死を、人々が惜しむ心情。 


(三)「ただありしさまにて、かたはらに居て」(傍線部オ)とはどういいうことか、状

    況が分かるように説明せよ。
  (文科のみ5点)
*内容説明問題。傍線部の解釈を最初に行い、女性が大将の夢枕に立った事実を説明す

 る。
◆状況の確認
 傍線部の直前に、「やがて端にうち休みて、まどろみ給へる」とあるので、大将はそのまま居眠りをした。
  ↓
 接続助詞「に」で主体が変わるので、大将の夢の中に「ありしさまにて」(=生前と変わらない様子で)誰かが出てきた。
  ↓
 その人物はリード文から飛鳥井の君と予想されるが、念のため傍線部の後を見ると、歌の後に
 「と言ふさまの、らうたげさもめづらしうて」
 (=と詠む様子の、可愛らしさもすばらしくて)
    ↓
 「らうたし」は女性や子どもに対して用いる形容詞なので、傍線部の主体は飛鳥井の君とわかる。
◆傍線部の解釈
「飛鳥井の女君がただ夢の中で生前と変わらない様子で、大将の傍らに座って」
 ↓
①大将の夢の中で
②飛鳥井の女君が
③生前の姿のまま
④大将の傍らに座っていた
*以上の状況を、客観的に解答する。解答欄は一行なので、30字程度で解答する。  
〈解答例〉
   大将の夢の中で、飛鳥井の女君が生前の姿のまま大将の傍らに座っていたということ。

→5点=②③④・・・各1点、①・・・2点(減点法)。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 狭衣大将の夢の中で、飛鳥井の女君が生前の姿で大将の側に座っていたということ。
〈K校〉
 飛鳥井の女君が夢に現れ、生前の姿のまま大将の側に座っているということ。
〈T校〉
 大将の見た夢で、生前の姿のままの女君が傍らに座っていた、ということ。


(四)「とふにぞかかる光をも見る」(傍線部カ)とはどういうことか、説明せよ。

  (5点)    
*内容説明問題。文脈から「とふ」の意味、「かかる光」の内容を検討する。
◆状況の確認
1.大将は亡くなった飛鳥井の女君の一周忌の法要を行った
  「暁にもなりぬらんとおぼゆるまで居明かし給ひて」
  (=大将は夜明け前にもなるに違いないだろうと思われる頃まで一晩中座っていらっ

  しゃって)
 ↓
2.法要の終わった翌日未明に、飛鳥井の女君が大将の夢枕に立った
 ↓
3.傍線部を含む飛鳥井の女君が詠んだ和歌の解釈。二句切れ、三句切れの歌である。
  「暗きより暗きに惑ふ」

  =「暗い迷いの道から、さらに暗い迷いの道へと迷っている」
  「死出の山」=「冥土にあるという険しい死出の山で」
  「とふ」=「訪ふ」=「訪問する・見舞う」/「弔ふ」=「弔う・供養する」
  ↓
*飛鳥井の女君の法要を行ったことから、「とふ」=「供養する」の意味と解釈する。 
   「とふにぞかかる光をも見る」
 =「あなたが私を供養してくださるので、このように仏の救いの光を見ることもでき

  る」
 ↓
4.リード文から、女君は愛した大将に知られることなく亡くなり、迷いの道をさまよ

  っていた。
 ↓(しかし)
①大将が法要を行ってくれたおかげで、
②成仏することができたと
③感謝を伝えに来た
 ↓
*以上をまとめる。解答欄は一行なので、30字程度で解答するが、収めるのに時間がか

 かるかも知れない。
解答例〉
   大将の供養のおかげで、自分は成仏することができ感謝しているということ。

→5点=①②各・・・2点、③・・・1点(減点法)。  
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 狭衣大将が手厚く弔ってくれるおかげで、自分は成仏できそうだということ。
〈K校〉
 大将が盛大に営んだ法要のおかげで、自分は成仏できるということ。
〈T校〉
 大将が弔ってくれたので、成仏に導く光を見ることができた、ということ。


(五)「経を読み給ふ」(傍線部キ)とあるが、それはなぜか、直前の和歌の内容を踏まえ

   て説明せよ。(5点)
*理由説明問題。解答の方針は以下の通り。
1.直前の和歌の内容の解釈。
2.傍線部直前の「枕浮き給ひぬべき心地して」(=枕が涙で浮いてしまいそうなほど

  悲しい気持ちが湧きなさって)の理由を考える。
3.その上で大将がなぜ経を読んでいるのかを考える。
◆直前の和歌の内容の解釈(二句切れと判断)
「後る」=「後に残される/先立たれる/先に死なれる」
「じ」=打消意志の助動詞「~まい/~しないようにしよう」
「契る」=「約束する/変わらぬ愛を誓う」
「ものを」=逆接+詠嘆の接続助詞「~のになあ」
「三瀬川」「三途の川」(註)
「や」=疑問の係助詞
「わたる」=時間の継続を表す補助動詞「~し続ける」
「らん」=現在推量の助動詞「今頃は~しているだろう」
①先立たれないようにしようと約束したのになあ。女君は死出の山へ旅立ち、今頃三途

 の川で私を待ち続けているのだろうか。

◆「枕浮き給ひぬべき心地して」(=枕が涙で浮いてしまいそうなほど悲しい気持ちが

 湧きなさって)の理由 
②死ぬときは一緒だと約束していたので、一人先立ってしまった飛鳥井の女君が、自分

 のことを三途の川(=あの世へ行く途中)で待ち続けていると思ったから。
◆大将が経を読んでいる理由
③成仏できないでいる飛鳥井の女君の冥福を祈るため。
 ↓
*①②③をまとめる。解答欄は一行なので、30字程度で解答する。

 和歌の後半の解釈から、女君が成仏できていないと分かるかがポイント。思い切って

 このくらいに圧縮してよい。
〈解答例〉
  自分への思いを残し成仏できずにいる飛鳥井の女君の冥福を祈りたいから。

→5点=「自分への思いを残し」・・・2点、「成仏できずにいる飛鳥井の女君」・・・2点 

   「冥福を祈りたい」・・・1点(減点法)。
 その他の不備は適宜1〜2点減点。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 自分への未練で成仏できないかもしれない飛鳥井の女君の冥福を祈りたいから。
〈K校〉
 大将は、飛鳥井の女君に自身への執着を捨てて成仏してほしいと思ったから。
〈T校〉
 女君が三途の川で大将を待ち続け、冥土に行けずにいると哀れんだから。

 

現代語訳
 年末に、狭衣大将はあの方(=女君)の一周忌の法要を執り行わせなさった。女君への愛情の証としては、法要を厚く催すことの他に何ができるか。いや、何もできることはない、とお思いになるので、経典や仏像の御飾りなどを、並々でなく立派に準備なさる。何事も、本当にその日のうちに成仏して極楽往生できそうなほど完璧に、取り計らいなさった。その当日、大将はひどく人目につかないように隠れて、大将ご自身が法要の場所へいらっしゃった。講師を務める僧は、比叡山の座主であった。招かれた僧六十人、七僧なども、並んで座っている。
 法要がとても盛大で尊いことにつけても、「亡くなったのは素晴らしい人だったのだなあ。大将にこれほどまでに大切に思われなさっていたことよ」と思って見る人が多い。そんなにも立派なご様子で、泣きながらお読みになる願文の文章の悲しさは、涙で袖を濡らさない人もめったにいなさそうなほどであるので、まして大将の着ている直衣の袖は、涙で絞れるほどまでになってしまうにちがいない。それというのも実は、大将も「人目にも私の心が弱いと思われるだろうか」とお思いになって、堪え忍ぼうとなさらないわけではないけれども、ただふと聞こえる詩文集や物語、古歌なども、自分の思いに重なる方面であるものは、格別に目が留まって、しみじみと心を動かされるものなので涙が止まらないのであるにちがいない。拝見する人々なども、「これほどまでに大将にお思いになっていただいたのはどなただろうか、これほどまでに大将から愛しく思われていた人は。本当に残念な寿命の短さだなあ」と、見て驚かない者はいない。いろいろと尊い供養の事柄は多いけれども、そのまま書いて伝えることができないのは、かえって尊いことが無いよりも残念なことだ。
 法要が終わって、僧も人々も退出してしまったけれども、大将ご自身はお残りになって、尼君とお会いになり、尽きることのない女君への愛情を感じなさった。日没を告げる入相の鐘の音がかすかに聞こえてくる、夕暮れの空の様子は、場所柄もあって、言いようもなく心細く感じられるのを、大将が簾をかき上げて、しみじみと物思いにふけって眺めなさって、勤行をなさっている様子は、とても尊く、しみじみとした風情がある。
 大将は夜明け前にもなっただろうかと思われる頃まで一晩中座っていらっしゃって、度を超して苦しいので、そのまま部屋の端でちょっと休んで、うとうとなさっていると、夢の中で女君が生前と変わらない様子で、大将の傍らに座って、このように言う。
  暗い迷いの道から、さらに暗い迷いの道へと迷っている。冥土にあるという険しい死出の山で。あなたが私を弔ってくださるので、このように仏の救いの光を見ることもできます。
と言う女君の様子が、可愛らしいさまであるのも、めったにないほど素晴らしくて、「何か言おう」とお思いになるうちに、はっと夢から覚めて空を見上げなさると、月が澄んで高く上っており、月の光だけが大将の顔に映っていた。雲の果てまで、はっきりと一面に澄んでいる空の景色は、普通の目覚めにでさえ、心細くなってしまいそうな空の様子なので、女君が傍らにまだいらっしゃるような気がして、自然と見渡すけれども、人々は皆、遠くへ下がって、とてもぐっすりと眠っている。
 大将は一人でしみじみと空を眺めなさって、女君が今ごろ泣きながら越えているだろう死出の山道まで思いを馳せなさると、ひたすら女君と初めて出会った折にあの吉野の山で女君の気持ちを確かめるために、あえてつれなくしたことを、女君が恨めしそうに思っていた様子などが、心が惹かれるように感じられたことも、今しがた目の前で向かい合っているように自然と思い出しなさって、
  死に遅れまいと約束したのになあ。女君は死出の山か三途の川で、私を待ち続けているのだろうか
と思いを馳せなさっても、枕が涙で浮いてしまいそうなほど悲しい気持ちが湧きなさって、女君の供養のためにお経を読みなさる。

 

第三問(文30点 理20点)・・・現代語訳・書き下し文は省略

【出典】白居易『双石』
 白居易の五言古詩。漢詩の出題は十年ぶり。世間では評価されない石を愛して側に置いたことを詠じている。
  例年同様、対句表現を意識した出題になっている。
  2016年の漢詩を解いていた受験生は、非常に参考になった。

(一)傍線部b・d・eを平易な現代語に直せ。(理・文とも12点)
b 「遺水 浜」 (水浜に遺され)
*傍線部の直前は「万古より」(=大昔から)であり、傍線部の後は「一朝入吾手」(一

 朝にして吾が手に入る)なので、「あっという間に/たやすく手に入れた」というこ

 とになる。
*傍線部aも確認すると
 「俗用無所堪 時人嫌不取」(俗用に堪ふる所無く 時人嫌ひて取らず)
  (=日常生活には役立たずで、世間の人は嫌って手に取ろうとしない)
 ↓
*つまりこの「双石」(厥)は作者が見つけるまで長い間放っておかれたのである。
*そこから「遺」は「のこる」と読み、「水浜」が場所なので「水浜に遺され」と読む

 のが妥当だろう。
*「水浜」=「浜辺」。「遺る」は「残る」と書き換える。
*さらに、この「水浜」は「註」より湖だと分かるので、解答に反映させる。
〈解答例〉
  湖の水辺に残されて/湖の水辺に捨て置かれ (理・文とも4点)

→4点=「湖の水辺」・・・2点、「残されて/捨て置かれ」・・・2点。
〇設問のポイント(採点の基準)
1「遺」を「のこる」と読み、文脈から受身と判断すること。
2「水浜」を「水辺」と訳せること。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 水辺に残されていて
〈K校〉
 湖の水辺に捨て置かれ
〈T校〉
 水辺に放っておかれていたが。

 

d 「求 其 偶」 (其の偶を求む)
*傍線部の前句と傍線部を含む句を検討する。ここは対句表現になっている。
 「人皆有所好」(人皆好む所有り)
    (=人は皆それぞれ嗜好があり)
 「物各求其偶」
    (=物はそれぞれその偶を求める)
*「其」は「物」を指す
*「偶」とは「其の偶」であるので、「仲間」という意味であろう。(→「配偶者」)
*前句との関係を考慮すれば、「自分に合った仲間」ということになる。
〈解答例〉
  自分に合った仲間を求める (理・文とも4点)

→4点=「自分に合った」・・・2点、「仲間」・・・2点。
〇設問のポイント(採点の基準)
1「偶」=「仲間」と訳出できたか。
2前句との関係から「自分に合った」と補えたか。 
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 自分に合う仲間を求める
〈K校〉
 自分の相棒を探し求める
〈T校〉
 仲間を求めるものだ
 
e 「不容」 (容れず)。
*傍線部の前句を見ると
 「漸恐少年場」(漸く恐る少年の場)
  (=若者の集まり)
*傍線部を含む句全体は
 「不容垂白叟」(垂白の叟を○○○)
 ↓
*前句と傍線部を含む句が倒置の関係になっており、さらに「少年場」と「垂白叟」が

 対句になっている。
*「容」は上に「不」があるので動詞として「いる」と読む。
*従って「不容」=「容れず」と読む。
 ↓
*さらに、傍線部を含む句が倒置であることを考慮すれば、傍線部は「恐」の目的語であると判断して、
 「容れざるを」と読むべきである。
*「容る」=「受け入れる・容認する」
*つまりこの二句は、「若者が集まるところでは、「垂白叟」=老人=「私」など受け入

 れてもらえないことを恐れる」という意味になるだろう。
〈解答例〉
  受け入れないのを  (理・文とも4点)

→4点=「受け入れない」・・・3点、「のを」・・・1点(減点法)。
〇設問のポイント(採点の基準)
1「不覚」と「不知」は同じ意味だと理解できたか。確実に得点したい。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 受け入れてくれないのを
〈K校〉
 受け入れてくれないことを
〈T校〉
 受け入れてくれないことを


 (二)「俗用無所堪時人嫌不取」(傍線部a)とはどういうことか、簡潔に説明せよ。 

    (文6点・理4点)
*傍線部の読み方は「俗用に堪ふる所無く 時人嫌ひて取らず」
*傍線部の訳は「日常生活では役立たずで、世間の人は嫌って手に取ろうとしない」
*主語は「厥」=「双石」。 
*傍線部の前の二句は
「蒼然両片石 厥状怪且醜」(蒼然たり両片の石 厥の状怪且つ醜)
 (=古びた二つの石は怪しくて醜い)
 ↓
*つまり傍線部は、このような石は日常生活に役に立たず、誰も顧みる人はいなかった

 ということ。解答欄は1行なので、30字程度で解答する。
〈解答例〉
  二つの石は日常生活に役に立たず、誰も顧みる人はいなかったということ。

  (文6点・理4点)

→6点=「二つの石」・・・2点、「日常性生活に役に立たない」・・・2点、

    「誰も顧みる人はいない」・・・2点(減点法。
〇設問のポイント(採点の基準)
1 「俗用」「無所堪」「時人」「不取」の解釈ができたか。
2 現代語訳を一般化して解答できたか。 
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 役立たず、世の人が見向きもしないということ。
〈K校〉
 二つの石は一般の役に立たないため、普通の人は関心を示さないということ。
〈T校〉
 石は実生活には役に立たず、世の人も嫌がって手に触れないということ。


文(三)「不レ似二人間有一」(傍線部c)とはどういうことか、わかりやすく説明せ

    よ。
*傍線部の読み方は「人間(じんかん)に有るに似ず」。
*傍線部は直前の「忽ち疑ふ天上より落つるかと」
 (=天上界から落ちてきたのかとすぐに疑った)
 と対をなしている。
*「人間」じんかんの解釈
  ・・・漢詩における「人間」は、現代日本語の「ヒト」ではなく、「人の住む世の中」

    「俗世間」を指す。この石が俗世離れした美しさを持っていることを強調してい

     る。
 ↓
*従って傍線部の直訳は「人間世界にあるものには似ていない」となる。
 ↓
*これを一般化し、対句を意識して説明する。解答欄は1行なので、30字程度で解答す

 る。
〈解答例〉
  石は天上界のもので、とても人間世界のものとは思えないということ。(文6点)

〇設問のポイント(採点の基準)
1対句を意識できたか。
2「人間」を「じんかん」として解釈できたか。
*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 人の世界に存在するものとも思えないということ。
〈K校〉
 奇怪な石は天のもので、人間世界のものとは思えないということ。
〈T校〉
 人間の世界にあるものとは思えない不思議な様だということ。

          
文(四)・理(三)「能伴二老夫一否」(傍線部f)について、「老夫」の指すところを明らか

      にして、平易な現代語に直せ。 (6点)
*傍線部の読みは「能く老夫を伴ふや否や」となる。
*「能」は可能の助動詞。「~否」は疑問。「老夫」については、前行の「垂白叟」の言

 い換えで、作者自身を指す。詩や随筆では、作者を遠回しな言い方をする。2016年の

 過去問題が参考になる。
*前句の「廻頭問双石」(頭をめぐらして双石に問ふ)と、
*最終句の「許我為三友」(我を許して三友為らしむ)

 (=私を加えて三人の友(自分と二つの石)になることを許してくれた。)から、
*作者は石を擬人化していることがわかる。ここまで分かれば簡単。「平易な」とある

 ので、石に語りかけるような解答にするのがいいだろう。

〈解答例〉
  石よ、おまえはこの年老いた私を仲間に入れてくれるかどうか。(6点)

→6点=「年老いた私」・・・2点、「仲間に入れてくれるか」・・・2点、

    「どうか」・・・2点。
 疑問文になっていなければ0点。石に呼びかけていない解答はマイナス1点。
〇設問のポイント(採点の基準)
1疑問文にすること。
2石に呼びかける形になっていること。
3「老夫」を「年老いた私」と解釈していること。
4「伴」を「友人」「仲間」と解釈していること。
参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 老いぼれの私を仲間に加えてくれるかどうか。
〈K校〉
 石よ、おまえたちは老いぼれである私白居易の友人になってもらえるか。
〈T校〉
 この老いぼれた私、居易を仲間に入れてくれようか。

 

*基礎的な句形のゆるぎない理解と、語彙力以上に文中の語意を正しく把握する力を駆

 使し、文章全体の中での傍線部として矛盾のない解釈と説明を求めている。

 

 

東京大学2026年度国語 現代文(第1問・文科第4問) 解答解説

  こんにちは。大学受験「天晴」塾のbackbeat-akaです。

 2026年度東京大学第1問評論と、第4問小説(文科専用)を掲載します。

 今回の東大国語入試では、第2問古文で衝撃的なことが起こったのですが、それは古典解説の際にお話しします。

 第1問の評論は非常に読みやすく、近年の第1問の中では取り組みやすい問題でした。

 第4問は昨年同様小説が出題されました。

 おそらく、近年の中等教育における小説教材の減少に対する危機感があるのではないかと思います。

 内容は非常に読みやすいのですが、解答要素を絞り込むのに苦労します。

 受験生諸君の参考になれば幸いです。

 なお解答例は、いつものとおり、「この程度書ければいいよ」というものです。

backbeat.hatenablog.com

 

backbeat.hatenablog.com

 

2026年度東京大学現代文第4問(文科・小説) 解答解説

2026年度 第四問 中谷実織「宿雨のあとで」 文科20点

設問解説・・・解答例はずべて「この程度書ければ充分」というレベルのものです。
*2025年度に引き続き小説の出題。

*小説ということもあり、問題文量は前年同様、それまでの随筆と比べて大幅に増加 

 し、設問も60字程度で解答するのが難しいものが多く、20分程度で解答するのはかな

 り困難である。
*前年同様、第一問が平易だっただけに、第四問と合わせて現代文の難易度が例年並み

 となるようになっている。

(一)「クリスマスツリーのようにも見えるそれを、彼女はやがて踏み潰した」(傍線部

    ア)とあるが、ここからうかがわれる翔子の心情について、説明せよ。(5点)
*心情説明問題。小説の「心情」問題は、書かれている出来事、事実を解答するという

    鉄則を踏まえる。
*「クリスマスツリーのようにも見える」スギナ(+)を「踏み潰した」(-)根拠と

 なる事実を拾っていく。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
「夫の転勤に伴って転居してきた」(リード文)
「娘の翔子は悩む権利さえ与えられず、馴染み切った環境から強制的にべりべりと剥がされて異空間に放り込まれ」
  ↓
「同い年の子たちの好奇の目に晒されている」
「ひとりっ子特有の諦めの早さで抵抗は放棄」
    ↓
「海にたゆたう流木のようなやる瀬なさをまとうようになっていた」
「つまらなそうに呟いた」 
「踏み潰した」
 ↓
*ここまでをまとめると
1.親の事情で強制的に馴染みきった環境から引き離され
2.抵抗する気もないが新しい環境に慣れず孤独でいてやる瀬なく
3.道端の草を踏み潰してしまうほどやり場のない気持ちを抱いている
 ↓
*以上の表現を整え、1行30字程度で書くことを勘案し、60字程度で解答する。この程

 度の解答でよい。

〈解答例〉
 親の事情で強制的に馴染んだ環境から引き離され、抵抗もしないが新しい環境には慣れず孤独でやり場のない気持ちを持て余している。(60字)

*参考 大手予備校の解答例       
〈S校〉
 親の事情で馴染んだ環境から引き離されたことを甘んじて受け入れつつ、孤独で居場所のない日々にやり場のない思いを抱いている。(59字)
〈K校〉
 両親の都合で慣れ親しんだ世界を奪われ新しい環境にもなじめないなか、勢いよく伸びた草にまで苛立ちをぶつけてしまうほど、鬱屈を持て余している。(72字)
〈T校〉
 親の独断で慣れ親しんだ環境から無理やり引き離されて周囲にもとけ込めないなかで、本来好ましいはずのものを破砕するほど、やるせない思いを抱いている。(72字)


(二)「彼女ー弥生さんは、、目尻に皺を浮かべ、悪戯っぽくほほ笑んだ」(傍線部イ)

    とあるが、ここからは弥生のどのような気持ちが読み取れるか、説明せよ。

   (5点)
*心情説明問題。「翔子」を「弥生」の心情を事実を押さえて説明する。
*自分の畑に招いた意図と、「悪戯っぽくほほ笑んだ」内容を説明する。解答要素が多

 いので、内容を精査して60字程度に収めるのが難しい。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
◆自分の畑に招いた意図 その1
「気づけば、ついさっきまでは能面のようだった翔子が笑っていた」
 ↓
「あんちゃん、お尻ふってる」
 ↓
「彼女はそっと、まるで翔子という生き物を怯えさせまいとするかのように、小さな声で呟いた」
 ↓
「囁くような声のまま、「うちの畑、見に来る?」と翔子に向かって尋ねる」
「秘密基地にでも誘うかのようだった」
 ↓
表情の全くなかった少女が飼い犬に興味を見せたのをきっかけに、ためしに畑に誘っ

 てみようとした(X)
◆自分の畑に招いた意図 その2
「ビニールハウスが整然と並ぶその手前に」
「土Dの区画も手入れが行き届いていて、真っすぐに伸びるきれいな畝からは等間隔に苗が顔を出している」
「雑草などほとんど目に入らない」
「しかし彼女は、その畑地の方には目もくれない」
「すぐに言葉が出なかった」  
「はっきりとした畝もなく・・・地面から生えているのが野菜なのか雑草なのかさえわからない、混沌とした土地」
「耕作放棄地かと思うほどに背の高い草がうっそうと生えている」
 ↓
「・・・・ジャングル」
 ↓
「いいでしょ」
「目が、日を浴びて光っていた」
 ↓
整然と管理された畑とは異なる、耕作放棄地かと思うほど混沌とした土地を翔子に見

 せたかった(Y)
◆「悪戯っぽくほほ笑んだ」の説明
翔子がびっくりしたのを見て、自分の目論見通りになったと満足した気持ちになって

 いる(Z)
 ↓
*(X)(Y)(Z)の表現を整え、1行30字程度で書くことを勘案し、60字程度で解答

 する。極力必要な要素のみ選択して解答する。

〈解答例〉
 表情の全くなかった翔子に、周囲とは違い混沌とした自分の畑を見せることで、目論見通り彼女の驚いた表情を見て満足している。(58字)

*参考 大手予備校の解答例       
〈S校〉
 畑というにはあまりに雑然とした自分の畑を見せ、狙い通り驚き興味を惹かれた様子の翔子に喜びを覚え、心が通じたと感じている。(59字)
〈K校〉
 何か事情ありげな少女とその母親に、周囲とは違い作物をのびのびと育成させている混沌とした畑を見せ、二人を驚かせようとした目論見が功を奏し満足している。(73字)
〈T校〉
 環境が変わって元気のない子どもを、予想外の、とても「畑」とは言い難い混沌とした土地に導き、好奇心をかき立てられるさまを見て自身の策の奏功を喜ぶ思い。(73字)

 

(三)「そう答えるわたしの声もはずんだものになっていた」(傍線部ウ)とあるが、そ

    れはなぜか、説明せよ。(5点)
*理由説明問題。傍線部の直前に「翔子のための提案ではあったが」とあるので、「わ

 たし」が心を浮き立たせる理由となる事実を本文から拾っていく。
*それにはこの土地に引っ越してきた事情が絡んでいるので、冒頭の部分から拾ってい

 く。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
◆「わたし」の転居にまつわる事情
「越してくる前に住んでいた街には、わたしの生家があり」
「母娘共に通った思い入れのある幼稚園があり」
「離れることに抵抗がなかったわけではない」
 ↓
不本意ながらの転居と娘の孤独感に「わたし」も気持ちが晴れず空虚感を抱いている 

 (X)
◆授業参観をさぼると決めた「わたし」の事情
「同い年の子たちの好奇の目に晒されている」
「さぼるのを決めたのはわたしだった」
「来ないでいいよと言ったときの翔子の虚ろな目」
「それを夫に告げたときの曖昧な笑みと「まあ、任せる」、」
「そいうったものすべてがばかばかしくなって」
 ↓
学校になじめない娘も「わたし」も授業参観に気乗りしない気分でいる(Y)
◆授業参観をさぼって「わたし」と翔子は何をするのか
「明日、弥生さんとアンバーに会いに行ってみる?」
「彼女の・・・驚きと喜び」
「弥生さんに初めて会ったとき以来、散歩といえばその長靴を履くようになっていた」
「わたしたちはポケットに軍手も忍ばせて」
「弥生さんは・・・私たちの提案を聞くと、あらまあ、とやわらかに笑い、畑も寄っていいかしら、と訊く」
「翔子がそれに「軍手、持ってきました」と即答した・・・わたしの顔はじんわりと熱くなった」
 ↓
弥生やその飼い犬と会って畑まで行くことができれば、空虚な日常から離れることが

 できると思った(Z)
 (ここでの「わたし」の心情をつかむのが受験生には難しいかもしれない)
  ↓
*(X)(Y)を一般化し、(Z)とともに表現を整え、1行30字程度で書くことを勘案

 し、60字程度で解答する。「閉塞感」という語は、「なじめない」「行き詰まり」等で

 もよいだろう。要素を凝縮するのに時間がかかる。

〈解答例〉
 気乗りしない授業参観を休んで弥生さんに会いに行く提案に娘が喜ぶ様子を見て、一時でも閉塞感のある日常から離れられると思ったから。(62字)

*参考 大手予備校の解答例       
〈S校〉
 授業参観を欠席して弥生さんの畑に行くという提案に喜ぶ翔子を見て、空しく煩わしい日常を脱せるような予感を自分も覚えたから。(59字)
〈K校〉
 母娘とも気乗りしない授業参観に行くよりも、弥生やその飼い犬と畑まで散歩に行くことができれば、閉塞した現状を変えられるのではないかと思ったから。(70字)
〈T校〉
 娘は新しい学校に馴染めず鬱屈し、夫は娘のことを無責任に自分に一任するという状況を打開するための大胆な提案に歓喜する娘を見て、自分も嬉しくなったから。(73字)


(四)「彼女の言葉に思わず翔子を見てしまう」(傍線部エ)とあるが、それはなぜか、

    説明せよ。(5点)
*理由説明問題。傍線部は、弥生さんの「育つ」という言葉を受けて、「わたし」の翔

 子に対する思いを重ねる場面である。
*この設問が本文全体を踏まえることを考慮すると、「わたし」が弥生さんの仕草に母

 と重なるものを感じている描写を拾う必要がある。つまり、
 「母(=弥生さん)→わたし→翔子」というつながりを意識した解答になる。
◆母の思い出と弥生さんとの共通点
「私の母などは・・・家族を放って奔放に生きたものだった」
 ↓
「わたしははっとした、そのあとで左手が耳朶に伸び、裏側をやさしく何度か撫でたから」
「亡くなった母が、よくそうしてピアスをゆらしていたものだった」
  ↓
「懐かしい記憶ーあのひとも生きていれば、彼女ほどの年齢だったろう」
 ↓
★自由に生きた母の面影に弥生さんを重ねている(X)
◆弥生さんの言葉と「わたし」の翔子に対する思い
「好きなものは先に食べて、辛いことはあんまりやらない。それでも育つから面白くてね」
 ↓
「反対に、あんまりこっちへ、こっちへとやりすぎると、なんだかうまくいかなかったりもして」
  ↓
「アンバーと一緒に走り回っている彼女は、小さな笑い声を上げていた」
「引っ越す前の家では、この笑い声が親友の女の子のものと重なって、二倍にも三倍にもなって聞こえてきたものだった」
 ↓
強制しないやり方が作物を育てるという弥生さんの言葉を聞いて、自分の娘に対して

 も親の都合や思惑を押しつけないことが大切だと感じた(Y)
 ↓
*(X)(Y)を表現を整えて統合し、1行30字程度で書くことを勘案し、60字程度で

 解答する。要素を絞って解答するのが難しい。

〈解答例〉
 作物は強制しない育て方が大切という弥生の言葉は、親の思惑で娘がのびのびと育つことを阻害してはならないと亡き母に言われたように感じたから。(67字)

*参考 大手予備校の解答例       
〈S校〉
 周囲からの強要のない自由が自然を育てるという弥生さんの言葉に、子育てに関する気づきを死んだ母から得たように感じたから。(58字)                                
〈K校〉
 作物に手を加えすぎるとうまくいかないという弥生の言葉を聞き、親の都合や考えで娘がのびのびと育つことを阻害してはいけないのではないかと感じたから。(71字)
〈T校〉
 植物は自力で育つもので過剰な介入はよくないと言われ、同様に子どもも、親は干渉を程々にして、本人の主体的な成長を見守ることが大切だと気づいたから。(71字)

本文マーキング①

本文マーキング②

本文マーキング③

 

2026年度 東京大学国語第1問(現代文評論) 解答解説

第一問 松本卓也「斜め論 空間の病理学」(文理共通)40点


◆本文展開図(マッピング)
第一意味段落(①~④)
①    精神分析(B)とオープンダイアローグ(A)の違い・・・臨床の空間配置

② フロイト・・・特異な空間的配置(背面椅子式連想法)
  ↓(このこと)
③ 精神分析(B)・・・主体(権威)と他者(服従・反抗)→「垂直的」な関係(B2)
                                                                      
④ 寝椅子に横たわる=分析家という他者・・・患者の頭上にいる
   ↓
  精神分析(B)という空間

  ・・・ア人間どうしのふつうの水平的空間を人工的な垂直的空間へと作りかえている
第二意味段落(⑤~⑮)
⑤ 精神分析の過程で生じること
 ↓(例)
⑥ 転移・・・患者が幼少期で体験した重要な他者との関係が、患者と分析家とのあいだ

       で再現
  ↓
⑦ 精神分析(B)において場所を転じてなされる再現が頻繁に生じる
 ↓(それは)
⑧ 分析における空間配置・・・幼少期の子どもと養育者のそれとよく似ている

⑨ 寝椅子を用いた精神分析・・・助けを求める/庇護、内密な部分を暴露、不安/

  解消・安心
  「大人に対する子ども」の立場を患者にとらせる

⑩ 本来、水平的なものである他者との関係
   ↓
  突如として垂直的な「大人に対する子ども」の関係に変貌
     他者が自分の足元から語りかける

   =幼児期、養育者から世話をされている状況の再現

⑪ 精神分析(B)において「横になる」
   ・・・「大人に対する子ども」の関係を人工的に作り出す
       +
     「超越者と、それに対する自分」という関係をも作り出す
 ↓(というのは)
⑫ 精神分析・・・分析家という他者が頭上から語りかけてくる             
 ↓(このこと)
⑬ 精神分析治療の原理

⑭ 精神分析の治療原理

   ・・・患者が分析家を厳しい超自我として体験/分析家が患者に対して解釈を行う
   ↓
  患者が徐々に過去に形作られた超自我のイメージをより抑圧的でないものへと更新

  する        

⑮ 寝椅子に横たわった患者の自我
       ・・・本来なら水平的な他者(隣人)(A2)であるはずの
  イ分析家を、垂直方向における「上」に存在する他者(=超自我)として同定する

   ことによってはじめて、自らが根底的に変化する可能性を得る 
第三意味段落(⑯~⑳)
⑯ オープンダイアローグにおける臨床空間(A)
    ↓
⑰ 患者か家族から電話相談→治療チームが組織→24時間以内に初回ミーティング

⑱ ミーティング・・・患者、家族、親戚、医師、看護師、心理士など
          車座で座り、対話(オープンダイアローグ)がなされる
  治療に関するあらゆる決定がなされる

⑲ ミーティング・・・すべての参加者に平等に発言の機会と権利(A2)
          医師や専門家の発言に患者や家族が従わなければならないというこ

          とはない  
    患者の病的体験・・・他の参加者に頭ごなしに否定されることはない
 ↓(こうして)
⑳ ミーティングの語り・・・ウ多数の声が響き合うポリフォニーになる
第四意味段落(㉑~㉚)
㉑ 精神分析(B)

  ・・・治療者と患者というふたりだけの関係が垂直方向において展開(B2)
  
  オープンダイアローグ(A)・・・他者との関係は水平方向において展開(A2)/ 

                  多数の関係へと拡散
 ↓(ただし、それは)
㉒ オープンダイアローグが水平的な他者関係のなかだけでなされる治療法であること

  を意味しない
 ↓(たしかに)
㉓ オープンダイアローグ・・・垂直的(権力的)な関係を排除し、水平的(平等)な関

  係によって治療を進めようとする
  ↓(しかし)
㉔ 垂直的な関係がいわば「弱毒化」されたかたちで再導入されている
  ↓
㉕ より詳しく説明
  ↓
㉖ オープンダイアローグ・・・本人のいないところで決めない
   ↓
  治療者の誰かが治療方針の決定にあたって患者に対する垂直的な権力を発動させな

  い
    患者不在の場で垂直的な権力を用いず、すべてを患者自身が参加する水平的な対話の

 なかで決定
      ↓(しかし)
    そのような水平空間のなかに、若干の垂直的な関係を可能にする契機(リフレクティ

  ング)が入り込む

㉗ リフレクティング・・・オープンダイアローグの最中に行われる専門家どうしの対話
  リフレクティングを患者に観察させる

   →患者に自分の心のなかの声と垂直的に対話することを可能にする

㉘ オープンダイアローグにおける対話
   ・・・すべての参加者のあいだで行われる「水平のダイアローグ」
     ↓
         それによって触発された個人の内部での「垂直のダイアローグ」
  エこのふたつの対話の協同こそが重要なのである              
 ↓(例)
㉙ 患者がオープンダイアローグのなかで父親のことを話題
   ↓
  それを聞いている他のメンバーの心の内部にも父親をめぐる連想が生じる
   ↓(そのような水平のポリフォニー)
  個人の内部でも父親をめぐって生じる垂直方向の「内なる声」との対話がポリフォ

  ニックな仕方で可能
 ↓(このような技法)
㉚ これまでの「内なる声」の哲学・思想的なモデルを更新
  「内なる声」が超越的な権威として作用しないようにするための「抑え」として水

  平方向のダイアローグを用いること
   ↓(そうすることによって)
  個人における変容を引き起こす
   ↓(それこそが)
     オープンダイアローグの空間で生じる治療の原理


設問解説・・・解答例はずべて「この程度書ければ充分」というレベルのものです。
*25年、26年と本文の要旨がつかみやすい文章が出題された。(一)~(三)まではポ

 イントを押さえて確実に得点したい。

(一)「人間どうしのふつうの水平的空間を人工的な垂直的空間へと作りかえている」  

  (傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。(6点)
*第一意味段落における説明問題。精神分析(B)における分析家と患者の関係につい

 て説明する。「垂直的関係」が人工的に作られる点にも触れる。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
③「精神分析が」
 「対等な・・・「水平的」な関係ではなく」
 「他者という権威とそれに対する服従ないし反抗が生じやすい「垂直的な」関係を」
 「治療のための原動力として用いている」
④「患者=寝椅子に横たわる」「分析家という他者=患者の頭上にいる」
 ↓
精神分析では分析家が横たわる患者の頭上にいる位置をとることで権威ある他者とそ

 れに服従する自己という上下関係を作り出している(X)
◆「ごくふつうの水平的関係」・・・本来対等なはずの患者と分析家(Y)
◆「人工的な垂直的」

  ・・・上下関係を作り出している/改変している/設定している(Z)
 ↓
*(X)(Y)(Z)を統合し、1行30字程度で書くことを勘案して、60字程度で解答を

 作成する。

〈解答例〉
 精神分析では分析家が横たわる患者の頭上に位置することで、本来対等な両者を権威ある他者と自己という上下関係に改変していること。(61字)

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 精神分析では、分析家が横たわる患者の頭上に位置し、本来対等な両者に権威ある他者と自己という上下関係を設定するということ。(59字)
〈K校〉
 患者と分析家は対等なはずなのに、分析家が患者の頭上で語る配置をとることで、権威ある超越者としての分析家に患者が服従する関係が築かれること。(68字)
〈T校〉
 二人の人間の間の本来対等な関係を、ある主体に対して他者の持つ権威が抑圧的に作用する関係に改変しているということ。 (55字)


(二)「分析家を、垂直方向における「上」に存在する他者(=超自我)として同定す

  ることによってはじめて、自らが根底的に変化する可能性を得る」(傍線部イ)とあ

  るが、それはなぜか、説明せよ。(6点)
*第二意味段落における理由説明問題。傍線部直前の第⑭段落の内容を踏まえ、患者の

 自我に変化がもたらされることを説明する。「可能性を得る」とあるので、「~できる

 から」と着地する。
*一般的な入院と精神分析との違いを明らかにすることがポイント
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
◆一般的な入院  他者との関係
⑩「入院や人工透析において、ときに患者に退行が見られる」
   「本来なら水平的なものである他者との関係」
   ↓
  「突如として垂直的な「大人に対する子ども」の関係に変貌」
  「他者が自分の足元から語りかけるという状況は、幼児期において養育者から世話を

 されている状況の再現」
⑪「「横になる」ことが、単に「大人に対する子ども」の関係を人工的に作り出す」
⑫「他者が自分の足元から語りかけてくる」
 ↓
*つまり、入院や人工透析においては、本来水平的な関係である他者が自分の足元から

 語りかけ、それは幼児期において養育者から世話をされている状況の再現であり、垂

 直的な「大人に対する子ども」の関係を作り出しているということになる。
◆精神分析における他者との関係
⑧「分析における空間配置・・・幼少期の子どもと養育者のそれとよく似ている」
 ↓
⑨「「大人に対する子ども」の立場を患者にとらせる」
⑪「精神分析(B)において」
  「「横になる」ことが、単に「大人に対する子ども」の関係を人工的に作り出す」」
   ↓(だけでなく)
    「「超越者と、それに対する自分」という関係をも作り出す」
 ↓(というのは)
⑫ 精神分析・・・分析家という他者が頭上から語りかけてくる             
 ↓
⑭「精神分析の治療原理は、患者が、分析家を厳しい超自我(=患者の幼少期における

 養育者)として体験」
  「超自我と同一視された分析家が患者に対して解釈を行う」
   ↓
  「患者が徐々に過去に形作られた超自我のイメージをより抑圧的でないものへと更新

  する」        
 ↓
⑮ 「精神分析において」
    「垂直方向における「上」に存在する他者(=超自我)として同定」
    ↓(はじめて)
  「自らが根底的に変化する可能性を得る」
 ↓
*つまり、精神分析における患者にとって分析家は幼少期の養育者に重ねられ、治療者

 が患者の頭上から解釈を行うことによって、患者が幼少期の超自我のイメージをより

 抑圧的でないものへと更新することができるのである。
 ↓
*以上の内容を1行30字程度で書くことを勘案して、60字程度で解答を作成する。この

 程度の解答でよい。

〈解答例〉
  幼少期の養育者に重ねられた分析家が解釈を行うことで、患者が幼少期の超自我のイメージをより非抑圧的なものへと更新できるから。(60字)

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 幼少期の重要な他者に重ねられた分析家が解釈を行うことで、患者は過去に作られた超自我の像をより非抑圧的な者にできるから。(58字)
〈K校〉
 精神分析では、患者が分析家を幼少期の養育者に重ね、分析家による解釈を受け取ることで、自らの超自我を抑圧のより少ないものへと刷新しうるから。(68字)
〈T校〉
 患者が横になることで超越者の位置に立った分析家の解釈の受容を通じ、イメージの抑圧性を減じた新たな超自我との関係において、患者の自我は存在するから、。 (73字)


(三)「多数の声が響き合うポリフォニーになる」(傍線部ウ)とはどういうことか、説

    明せよ。(6点)
*第三意味段落における内容説明問題。ポリフォニーとは「二つ以上の独立した旋律

 が、互いの独立性を保ちながら協和して進行する音楽様式」のことだが、知らなくて

 も「響き合う」ことだと分かる。
*傍線部の主語は「ミーティングの語り」。「オープンダイアローグ」における「ミーテ

 ィング」がなぜ「ポリフォニー」になるのかを拾っていく。

*さらに、第㉙段落にも「ポリフォニー」に関する記述があるので、要素を拾う。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
◆「ミーティング」についての内容
⑯「オープンダイアローグにおける臨床空間」(A)
 ↓
⑰「患者か家族から電話相談」→「治療チームが組織」→「24時間以内に初回ミーティ

 ング」
⑱「ミーティング」・・・「患者、家族、親戚、医師、看護師、心理士など、本人にかか

 わる重要な人物」
  「車座になって座り」「開かれた対話(オープンダイアローグ)がなされる」
  「治療に関するあらゆる決定は本人を含む全員が出席したミーティングで決定され

     る」
 ↓
⑲「ミーティング・・・すべての参加者に平等に発言の機会と権利」
  「医師や専門家の発言に患者や家族が従わなければならないということはない」  
  「患者は・・・その病的体験は他の参加者に頭ごなしに否定されることはなく・・・ほかの

 参加者が新たな語りをつけ加えていく」

 ↓
*まとめると
1.患者とそれにかかわる重要な人物が参加し
2.平等に発言の機会と権利があり
3.医師や専門家の発言に患者や家族が従う強制力はなく
4.患者の病的体験は他の参加者に否定されることがなく
5.その体験についてほかの参加者にも新たな連想が生じて語りを次々とつけ加えて多

  様な語りが生じる
*以上の内容を1行30字程度で書くことを勘案して、60字程度で解答を作成する。「ポ

 リフォニー」=「響き合う」のニュアンスを解答に盛り込みたいが、この程度の解答

 でよい。

〈解答例〉
 患者とその関係者や専門家が自由に発言するなかで、参加者たちに新たな連想が次々と発生して影響し合いながら多様な語りが生じるということ。(65字)

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 患者や家族、専門家がみな平等に発言の機会と権利を与えられ、相互に影響し合いながら無数の語りが紡ぎ出されていくということ。(59字)
〈K校〉
 患者と様々な立場の関係者が集い、いかなる発言も排除されずに全員が平等に対話し、次々と新たな語りが触発され、多様な語りが場に満ちていくこと。(68字)
〈T校〉
 オープンダイアローグでは全参加者が平等に発言し、患者の発言には他者が新たな語りをつけ加えて、多様な意見が協調的に併存する状況が現出するということ。(72字)


(四)「このふたつの対話の協同こそが重要なのである」(傍線部エ)とはどういうこと 

    か、本文全体の趣旨を踏まえて100字以上120字以内で説明せよ(句読点も一字と

          数える)。(16点)
*第四意味段落と全体の趣旨を踏まえて、傍線部に至る展開を説明する。解答の方針は

 次の通り。
1.「水平のダイアローグ」(A2)と「垂直のダイアローグ」(B2)がどのように

  「協同」し、それがどのような点で「重要」なのか説明する。
2.精神分析(B)との対比を踏まえる必要がある
3.比較対象を先に記述するのが解答の常套なので、「精神分析」(B)を先にもってく

  る。
4.「水平」「垂直」は一般的な表現に変える。
*時間がない((四)の解答時間は20分程度が目安)中で、これまでの設問の解答を利

 用するとよい。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
◆「精神分析」に関する記述・・・(一)の要素を参考にする
分析家は患者と一対一で対置し、両者は権威ある他者と自己という上下関係をと

 る・・・解答要素(W)

◆「水平のダイアローグ」と「垂直のダイアローグ」の協同関係についての記述
㉑「オープンダイアローグ・・・他者との関係は水平方向において展開」「多数の関係へと

 拡散」
   →(三)の解答要素
㉔「垂直的な関係(B2)がいわば「弱毒化」されたかたちで再導入されている」
㉖「水平空間のなかに、若干の垂直的な関係を可能にする契機(リフレクティング=専

 門家どうしの対話)が入り込む
 ↓
㉗「リフレクティングを患者に観察させる」
  ↓
 「患者に自分の心のなかの声と垂直的に対話することを可能にする」
 ↓
㉘「オープンダイアローグにおける対話・・・すべての参加者のあいだで行われる「水平の

 ダイアローグ」」
  ↓
  「それによって触発された個人の内部での「垂直のダイアローグ」」
 ↓
*まとめると
オープンダイアローグでは多数の参加者が対等な関係で参加するが、その中で専門家

 どうしの対話が行われ、それを患者に観察させることで患者は自分の心のなかの声と

 垂直的に対話することが触発される・・・解答要素(X)
ただし、その「垂直的な対話」は「弱毒化」された形なので、絶対的権威ではなく、「より非抑圧的なもの」(=(二)の要素)として、である・・・解答要素(Y)

◆なぜこのことが重要なのか
㉙「個人の内部でも父親をめぐって生じる垂直方向の「内なる声」との対話がポリフォ

 ニックな仕方で可能」
 ↓(このような技法)
㉚「これまでの「内なる声」の哲学・思想的なモデルを更新」
  「「内なる声」が超越的な権威として作用しないようにするための「抑え」として水

   平方向のダイアローグを用いる」
   ↓(そうすることによって)
  「個人における変容を引き起こす」
 ↓
患者が内なる声(それが超越的な権威として作用しないようにするための抑えとして

 水平方向のダイアローグを用いながら)と対話することで変容を引き起こす

 ・・・解答要素(Z)
 ↓
*(W)~(Z)の内容を整理して、120字以内で統合する。この程度の解答でよい。
*「変容」を「患者の症状が改善する」と解答するのは言い過ぎだろう。

〈解答例〉
 権威ある分析家が患者と一対一で対置する精神分析と違い、オープンダイアローグでは多数の参加者が対等な関係で参加し対話を行い、患者はときに専門家同士の対話を観察すると、非抑圧的な形で自分の内なる声との対話が触発され、変容を引き起こすということ。(119字)

*参考 大手予備校の解答例
〈S校〉
 治療者と患者が権威ある一対一の関係をとる精神分析と異なり、オープンダイアローグでは多数の参加者の対等な対話の中でときに専門家同士の対話が示され、患者の内なる声が絶対的権威になるのを妨げつつ患者内部の対話が触発されて、患者が変容するということ。(120字)
〈K校〉
 オープンダイアローグでは、患者と全関係者が車座で行う平等な対話により、頭上に君臨する超越者に患者が従属する関係を排した上で、専門家同士も対話を行い、それを受けとめた患者が心の中で対話することで、個人の変容が生じ、症状の改善が可能となること。(119字)
〈T校〉
 精神分析は超自我と同一視される、権威的な分析家と患者の二者間で行われるが、オープンダイアローグでは多数の平等な参加者の対話により、内部の権威的な声との対話を触発してさらにその権威性を抑制することが、個人の変容をもたらす上で大切だということ。(120字)


(五)6点
 a 変貌  b 親戚  c   幻覚

本文マーキング①

本文マーキング②

本文マーキング③