こんにちは。大学受験「天晴」塾 代表のbackbeat-akaです。
今回は2024年度早稲田大学 文学部の現代文パート問題(一)(二)を掲載します。
文学部の問題は、早稲田の他学部に比べて非常にオーソドックスな出題をします。
特に現代文は、やはり国語の先生が作った問題だなあ、という印象です。(設問と選択肢の解答に瑕疵がない。)
2024年度の現代文は、いくぶん平易で、読みやすかったと思います。
文学部は随筆が出るのが特徴で、その対策(筆者の思考を追いかけて読む練習)は欠かせません。
文学部についてはむしろ、古典が手強いので、入念な準備が必要です。これについては、次回掲載の古典パートでお話しします。
2024年 早稲田大学文学部 国語解答解説
(一)(現代文) 予想16点 (各2点と予想)
◎本文展開(マッピング)
第一意味段落(①~④)
① 「裁判官は感情に動かされてはならない」/「裁判官は公平中立の立場に立たなけ
ればならない」
・・・文化的な「台本」(B)=一般的認識
② 古代ローマの法学者の言葉・・・法と正義は不可分の関係
司法・・・人々の間の( A )な関係性を保持することをめざす
③ 裁判官の良心・・・各種の圧力に屈することなく「等しいものを等しく扱う」ための
拠り所となるもの(=A)
↓(そうであれば)
「これはおかしい」という感覚/正義感覚/法感情・・・裁判官の( B )と密着不
可分な関係にある
↓(こうした文脈から)
④ R・ソロモンの議論
一群の感情こそが正義感覚の実体・正義を第一義的に個人の徳の問題として捉える
(=A)
↓
正義は決して( C )的な原理として論じられるべきではない
↓(つまり)
正義は人々が現実に抱く感情
1こうした感情をいかに涵養するかが重要なのだ
第二意味段落(⑤~⑩)
⑤ 正義感覚は感情にほかならない(A)・・・情動主義(B)に陥っているとの批判
↓
だが、ソロモンによればこのような批判は
( D )という、誤った感情理解に基づいている
感情・・・認知/自分や他の人々についての評価的な判断/合理的なもの
⇕
理性は合理的であるが感情は非合理的・・・退けられる
⑥ ソロモンが正義感覚としての感情の中で重視したもの
・・・憤り、義憤、復讐心=ネガティブな感情
↓(それらは)
人々の公平な関係性と密接に結びついている
⑦ 感情に動かされない裁判官を理想とする台本(B)・・・公平さを意味する
↓(それゆえ)
裁判官が原告や被告に共感・同情・・・偏った判断を招くもの=認められない
⑧ (共感が裁判官に求められるべき資質であるか否かの例・・・アメリカ)
⑨ M・デルマールの議論
共感・・・能力(B2)
同情(A2)・・・認知的かつ評価的な、他者に向けられた感情
評価的・・・相手が自分にとって重要/相手に何らかの関心を持つ・・・薄い評価
2同情とは一つのプロセスであり、それは次の五つの段階から構成される
①( E )
②( F )・・・相手が苦しんでいるかもしれないと認識し始める
③( G )・・・相手の苦しみと同じ苦しみを感じているとは想定できない
④( H )・・・相手が抱いていると思う苦しみの一部を感じる
相手のパースペクティブ(立場・視点)を通した想像
⑤( I )・・・相手のパースペクティブから抜け出して、相手の苦しみについての
感情を自身が経験
相手の苦しみをよりよく理解することで、相手に対する悲しみの感
情もさらに強くなる
↓(このように)
⑩ 同情・・・重層的、段階的/往復的な動態的プロセス
↓(こうした感情の作用)
想像力が豊かなものになり
↓(だからこそ)
能力ある共感(B2)ではなく、感情である同情(A2)に注目する
第三意味段落(⑪~⑯)
⑪ 想像・・・ある状況においてそのひとがそのような経験をしているのかを問うこと
パースペクティブを通した想像
・・・具体的、個別的な経験を通じて見えてくる、その人のニーズ、関心、価値
観を能動的に構築すること
↓(さらに)
複数のパースペクティブを切り替えて想像する・・・状況に関する多くの知識が蓄積
感情・・・想像力を拡張させ、それによって感情経験はさらに強化される
↓
複数のパースペクティブ(立場・視点)による想像が重要
↓(以上の準備的考察)
⑫ デル・マールの議論
同情を感じること(A2)は、法的判断の質を向上させる
↓(なぜなら)
法的判断の質・・・裁判官がどの程度多角的なパースペクティブによる想像力を用いることができるか否かに左右される
↓(そして)
この想像力の行使・・・現実に同情を感じられるか否かに影響される
↓(それでは)
3なぜ多角的なパースペクティブによる想像が法的判断の質にとって重要となるの
か
(デル・マール/虐待事件の例)
⑬ デル・マールの議論
具体的な経験についての想像が、「身体の自由の剥奪」という法的観念をどのよう
に適用すべきかを探るのに役立つ
複数のパースペクティブを用いて、個別的/具体的な経験から彼らのニーズ、関
心、価値観を構築
↓(そうすることで)
当事者に対して大きな敬意を示す/法的判断の質を高める
↓(このように)
⑭ すべての当事者のニーズ、関心、価値観を、多角的なパースペクティブによる想像
力を用いて理解しようとすること
・・・公平な裁判の原理をさらに徹底させる試み
↓(こうした)
想像力を拡張させる同情
・・・4不偏性への脅威というよりも、むしろ不偏性の条件と言わなければならない
↓
多角的なパースペクティブによる想像力は、「当事者の声に耳を傾ける」という裁
判官に求められる特質(技能)の一つ
↓(このように)
⑮ よき裁判官に求められる特質の多くは感情に関わるもの
↓
こうした特質を身につけるためには文学的想像力が有用
5「法と文学」研究では、法曹教育における文学の意義が模索されてきた
⑯ 感情は決して非合理で情動的なものではない
↓(理解が進めば)
現実の裁判官たちも、「感情に動かされない裁判官」(B)という台本どおりに振
る舞う必要はなくなる
↓(そこで求められるもの)
他者の感情について認識し、理解し、管理する能力/感情的知性
◎設問解説
*本文は筆者が「裁判官は感情に動かされてはならない」という文化的な「台本」に疑
問を抱き、裁判官には「感情的知性」が必要だと主張した文章。文章の展開は明快
で、順に読み進めれば理解できる。
問一(マーク・選択)
*空欄に入る語の組み合わせを選ぶ。文章の論理(意味)を丁寧に追いかける。
◆空欄A
②「法と正義は「等しいものを等しく扱う」」
↓
「司法は人々の間の( A )な関係性を保持することをめざす」
↓
*したがってAには「公平」が入りそうだ。
◆空欄B
③「各種の圧力に屈することなく「等しいものを等しく扱う」」=裁判官の良心
↓(そうであれば)
「これはおかしい」という感覚ー正義感覚ないし法感情は、裁判官の( B )と密
着不可分な関係にある
*Bには「良心」意外に入るものがない。
◆空欄C
④「一群の感情こそが正義感覚の実体・正義を第一義的に個人の徳の問題として捉え
る」
⇔
「正義は決して( C )的な原理として論じられるべきではない」
↓(つまり)
*正義は人々が現実に抱く感情 ・・・「実体」「現実」と反対の語は「抽象」だろう。
正解:「イ」
問二(マーク・選択)
*空欄補充問題。問一と同様、空欄前後の文章の意味のつながりを捉える。
⑤「正義感覚は感情にほかならない」
↑
「情動主義(B)に陥っているとの批判」
↓(このような批判)
( D )という、誤った感情理解に基づいている
「感情・・・認知/自分や他の人々についての評価的な判断/合理的なもの
⇕
「理性は合理的であるが感情は非合理的であるといった二項対立的理解は退けられる
*つまり空欄は「誤った感情理解」であり、それは「感情は非合理的である」という認
識のこと。
これが読み取れれば正解は容易に見つけられる。
イ・・・「理性と相補的な関係」が誤り。方向が違う。
ロ・・・正解。「感情は非合理」が該当する。「情動的」の言い換えは「衝動的」「気
まぐれ」となっている。
ハ・・・「自分の置かれた状況を認知」の話題が誤り。
ニ・・・「道徳に訴えて」「不当な扱い」の話題が誤り。
問三(マーク・選択)
*傍線部内容説明。「こうした感情」=「正義感覚」(=A)を「いかに涵養するか」
=「どうやって養うか」の内容を説明したものを選ぶ。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
④「正義感覚」・・・共感、憐れみ、同情、寛大さ、罪悪感、憤慨、復讐心
=「一群の感情=」「人々が現実に抱く感情」
↓
*以上の文脈と「涵養」の意味を正しく説明している選択肢を選ぶ。
イ・・・「正義に還元できない」「正しく教育」が誤り。方向が違う。
ロ・・・正解。「各人の現実的な感情に立脚」「養い育む」が合致している。
ハ・・・「情動的に正義と感情との癒着を忌避する傾向」の方向が誤り。
ニ・・・徳は憤りや憐れみを超越した高次の理念」の話題が誤り。
問四(マーク・選択)
*空欄補充問題。各空欄の直後に続く文章から、それぞれに補うべき文を考える。
*「パースペクティブ」とは設問にもあるように、「立場、考え」と考えればよい。
⑨「同情とは一つのプロセスであり、それは次の五つの段階から構成される」
( E )
( F )・・・相手が苦しんでいるかもしれないと認識し始める
( G )・・・相手の苦しみと同じ苦しみを感じているとは想定できない
( H )・・・相手が抱いていると思う苦しみの一部を感じる
相手のパースペクティブ(立場・視点)を通した想像
( I )・・・相手のパースペクティブから抜け出して、相手の苦しみについての感
情を自身が経験
相手の苦しみをよりよく理解することで、相手に対する悲しみの感情
もさらに強くなる
↓(このように)
⑩「同情は、重層的、段階的で、往復的な動態的プロセスである」
*つまり、「E」→「I」にしたがって段階的に同情の度合いが深まっていくということである。
*この観点で選択肢を検討すれば、最も初期の段階(E)は「ハ」であり、最も進んだ
段階(I)は「イ」であろう。
*残りの選択肢「ロ」「ニ」「ホ」について比較すると、「ニ」→「ホ」→「ロ」の順
に同情が深まることが分かる。(F)(G)(H)に続く文と照合しても問題ない。
正解:「ホ」
問五(マーク・選択)
*傍線部理由説明問題。第⑫段落~第⑭段落の傍線部4直前までの内容を押さえる。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
*第⑫段落は虐待事件の例であり、第⑫段落~第⑭段落の傍線部4直前までがそれを一
般化した部分である。
⑫「なぜ多角的なパースペクティブによる想像が法的判断の質にとって重要となるの
か」
↓
⑬「具体的な経験についての想像が、「身体の自由の剥奪」という法的観念をどのよう
に適用すべきかを探るのに役立つ」
「複数のパースペクティブを用いて、個別的、具体的な経験から彼らのニーズ、関
心、価値観を構築」
↓(そうすることで)
「当事者に対して大きな敬意を示す」「法的判断の質を高める」・・・解答要素X
↓(このように)
⑭「すべての当事者のニーズ、関心、価値観を、多角的なパースペクティブによる想像
力を用いて理解しようとすること」
・・・「公平な裁判の原理をさらに徹底させる試み」・・・解答要素Y
↓
*解答要素XYの要素を満たしている選択肢を検討する
イ・・・「複雑な利害関係が当事者間にはあるので、それに介入するために」が誤り。
方向が違う。
ロ・・・「被害者の権利を保証することで」が誤り。方向が違う。
ハ・・・正解。「当事者の声に耳を傾ける」が合致している。
ニ・・・「パースペクティブを見直す」の話題が誤り。
問六(マーク・選択)
*傍線部内容説明問題。第⑬段落後半~第⑭段落の内容をおさえる。
*「不偏性」=「偏りがなく公平なこと」といおうことだから、「同情」が偏りのない
裁判の条件(=前提)であるということになる。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑬「当事者に対して大きな敬意を示す」→「法的判断の質を高める」
↓(このように)
⑭「すべての当事者のニーズ、関心、価値観を、多角的なパースペクティブ(=さまざ
まな立場や考え方)による想像力を用いて理解しようとする」
・・・「公平な裁判の原理をさらに徹底させる試み」
↓(こうした)
「想像力を拡張させる同情は」
「不偏性への脅威というよりも、むしろ不偏性の条件と言わなければならない」
↓
「多角的なパースペクティブによる想像力は、「当事者の声に耳を傾ける」という裁
判官に求められる特質(技能)の一つ」
イ・・・「裁判官のみが固執する感情的な営為ではなく」「様々な人間が関わる裁判制
度の存立基盤たり得る」の話題が誤り。
ロ・・・「すべての人間が平等に持ち得る資質」の方向が誤り。
ハ・・・正解。
ニ・・・「多角的なパースペクティブの獲得に不可欠」の方向が誤り。パースペクティ
ブは獲得するものではなく想像のための手段である。
問七(マーク・選択)
*傍線部理由説明問題。傍線部の理由に該当する記述は本文にないので、第⑮段落~第
⑯段落の展開を踏まえて、文学的体験によって他者感情への想像力涵養に役立つ、と
いうことを捉えるしかないだろう。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑮「よき裁判官に求められる特質の多くは感情に関わるもの」
・・・多角的なパースペクティブによる想像力
↓
「こうした特質を身につけるためには文学的想像力が有用」
「「法と文学」研究では、法曹教育における文学の意義が模索されてきた」
⑯「感情は決して非合理で情動的なものではない
「他者の感情について認識し、理解し、管理する能力」「感情的知性」
↑
*この能力の醸成に文学的体験が必要ということだろう。この程度しか読み取れない。
イ・・・正解。
ロ・・・「他者と共有する普遍的な知識や教養」の方向が誤り。
ハ・・・「当事者の声や法律の条文を解釈するのに役立つ」の方向が誤り。
ニ・・・「自身の非合理で衝動的な一面を自覚する」の方向が誤り。
問八(マーク・選択)
*趣旨判定問題。筆者の主張と合致するものを選ぶ。本文マーキングと脳内マッピング
が手がかりになる。
イ・・・「自己内心の良識と道徳観に従うのではなく」が言い過ぎ。「他者のパースペ
クティブに基づく「感情的知性」」も方向が違う。
ロ・・・「法に関する文化的な「台本」を破棄」の方向が誤り。「破棄せよ」とまでは
言っていない。
ハ・・・「他者の立場に同情することは、往々にして法の公平性を毀損する」の方向が誤
り。
ニ・・・正解。
(二)(現代文) 予想24点 (問九~問十六は各2点、問十七は各4点と予想)
◎本文展開(マッピング)
第一意味段落(①~⑨)
① 志村ふくみ「野の果て」・・・その場を離れ、心を落ち着かせ、再びその世界に入る
↑
② 人が自然界の中で自分の命をつなげる必要に迫られた感覚
③ 毎朝の散歩・・・それぞれの季節の道の違いに気をつける
↑(それは)
④ たしかに「( Ⅰ )」ではあるが、所詮、行政の管理する公の公道→私は安全
登山、水泳の経験・・・管理され、見守られている
⑤ 「野の果て」・・・管理された「自然を楽しむ」という気分とは異なる自然に向き合
っていた
↓
A自然界の一つ一つの命に、覚悟の上でとことん関わる
↓
そこにある言葉の一つ一つの力が、この世の向こう側に、自分を引き込むようであ
った
↓
⑥ 私たちが日常に目に見える自然界
+(だけでなく)
「色の背後」にある「すじの道」「植物の生命」「純粋無垢な赤」
・・・この世の「背後」
↓
⑦ 志村ふくみの染めの現場からありありとその「生命」を感じ取ってしまった
(文章の引用・・・藍)
↓
⑧ 「藍」が、その身を志村さんに委ねている
「糸が」みずから藍甕の」中に沈み、色と香りを吸収する
↓
「健やかな子どもの笑顔となって私にほほえんでくれた」
↓
志村さんの顔が見える・・・藍染めの糸と向かい合って互いに微笑む「二人」
⑨ 「かめのぞき」という一文・・・藍が命として、本書の中で生き、寿命をまっとうす
る
第二意味段落(⑩~⑫)
⑩ B志村さんが染色を語るとき、主語は志村さんではない
↓
植物・生物と背後にある水と空気と土、つまり風土
⑪ (私の対談本からの引用)・・・色や自然が「主体」
⑫ 志村さん・・・色が人間の思考の領域を超えている/見えない世界からのメッセージ
↓(考えてみれば)
C見えない世界から出現してまたそこに戻っていくのは、人間も同じである
↓
色と人とは、同じく「空」/光も闇も含めたすべてのつながりの中で存在している
第二意味段落(⑬~⑭)
⑬ 「色」を表す言葉・・・色名やその表現についての志村さんの言葉
「およそ山野にある植物すべてから鼠色は染め出せるのです。しかも一つとして同
じ鼠はないのです」
↓
⑭ 自然界においては、「同じ色」など実在しない
同じ色が存在しないのなら色名は単なる「( Ⅱ )」でしかない・・・不正確/実
体がない
↓
志村さん・・・色名と色の描写は「情緒的な世界」(=夕顔鼠)
↓
日本の古典文学には、色が多くのものをもたらした
◎設問解説
*志村ふくみ「野の果て」の言葉が描き出す世界について語ったエッセイ。随筆特有の
文学的表現を、筆者の思考に従って丁寧に追いかけ、内容を的確に捉える。
問九(マーク・選択)
*脱落文挿入問題。脱落文の表現と挿入段落末尾の文章を照合し、対応させる。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
1.脱落文の表現に注意すると、「その全体」の指すものが直前に書かれていなければ
ならない。さらにそれは、「目に見えない「自然の理」」と表現されるものとな
る。
2.挿入段落末尾の文章を確認すると、明らかに「イ」「ロ」「ニ」「ヘ」「ト」は、
「その全体」が指すものが書かれていない。
3.「ハ」の直前の文章
「私たちが日常に目に見える自然界であるだけでなく」/「「色の背後」にある「す
じの道」」/「「植物の生命」」/「「純粋無垢な赤」が存在する、この世の「背
後」なのである」
4.「ホ」の直前の文章
「B志村さんが染色を語るとき、主語は志村さんではない」/「植物・生物と背後に
ある水と空気と土、つまり風土である」
↓
*「全体」という観点から考えれば、「植物・生物」の「背後」に「風土」があり、さ
らに「その全体」の向こうに「自然の理」がある、という文脈が違和感がない。「ハ」の「この世の「背後」」は「全体」の指すものとは言えない。
正解:「ホ」
問十(マーク・選択)
*空欄補充問題。空欄前後の文脈(=筆者の思考の流れ)を確認
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
③「毎朝の散歩」/「それぞれの季節の道の違いに気をつける」
↑
④「それはたしかに「( Ⅰ )」ではあるが」
⇔
「所詮、行政の管理する公の公道」/「私は安全」/「管理され、見守られている」
↓
⑤「野の果て」=「管理された「自然を楽しむ」という気分とは異なる自然に向き合っ
ていた」
↓
*ということは、空欄(Ⅰ)には「管理」と反対の意味の語が入ることが分かる。選択
肢を検討すると「自然」しかない。筆者は「自然」にカギ括弧を付けることで、それ
は本当の意味での自然ではない、ということを暗示している。
正解:「ハ」
問十一(マーク・選択)
*傍線部内容説明問題。傍線部に続く第⑨段落までの筆者の思考の流れを追いかける
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑤「野の果て」=「管理された「自然を楽しむ」という気分とは異なる自然に向き合っ
ていた」
↓
「A自然界の一つ一つの命に、覚悟の上でとことん関わる」
↓
「そこにある言葉の一つ一つの力が、この世の向こう側に、自分を引き込むようであ
った」
↓
⑥「この世の向こう側」・・・
「私たちが日常に目に見える自然界」/「「色の背後」にある「すじの道」」/
「「植物の生命」」/「「純粋無垢な赤」
「この世の「背後」なのである」
⑦「志村ふくみの染めの現場からありありとその「生命」を感じ取ってしまった」
⑨「まさに藍が命として、本書の中で生き、寿命をまっとうする」
↓
*つまり傍線部は、「自然界の命が寿命をまっとうすることに、とことん向き合うこ
と」であることがわかる。
イ・・・「生命の法則を体系的に理解」の方向が誤り。
ロ・・・正解。
ハ・・・「自然の不思議な世界に魅了」「力の源泉に極限まで近づこう」は、本文の内容
と合致するが、傍線部の説明ではない。
ニ・・・「厳しい環境に立ち向かい命の輝きに触れよう」の話題が誤り。
ホ・・・「生物の命と引き換え」「失った命を別の形で生かそう」という話題が誤り。
問十二(マーク・選択)
*傍線部内容説明問題。「第⑩段落~第⑪段落から、「主語」は何かを抑える。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑩「B志村さんが染色を語るとき、主語は志村さんではない」
↓
「植物・生物と背後にある水と空気と土、つまり風土」
「さらに言えば、その全体の向こうにある目に見えない「自然の理」である」
⑪(私の対談本からの引用)・・・色や自然が「主体」
↓
*つまり「風土」「色や自然」が主体であることが分かる。
イ・・・内容は本文の通りだが、傍線部を言い換えただけで設問の解答になっていな
い。
ロ・・・「「自然の理」に促されて言葉となる構造」という方向が違うので誤り。
ハ・・・「意志が植物や生物に反映」の方向が誤り。
ニ・・・正解。
ホ・・・「宗教的な自然の力」という方向が誤り。
問十三(マーク・選択)
*理由説明問題。第⑪段落、第⑫段落における筆者の思考の流れを確認する。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑪「色や自然が「主体」」
↑(そのことの重大さ)
⑫「私は自分の問題として初めて受け止めた」」
「色が人間の思考の領域を超えていること、見えない世界からのメッセージである」
↓(考えてみれば)
「C見えない世界から出現してまたそこに戻っていくのは、人間も同じである」
↓
「色と人とは、同じく「空」なのであり」
「光も闇も含めたすべてのつながりの中で存在している」
↓
*「見えない世界」とは⑤「この世の向こう側」⑥「この世の背後」のことである。人
間も他の生命もそこから生まれてそこに帰って行くことを意味していることが分か
る。
イ・・・正解。「生命はことごとくその向こう側の世界を持っていて」が本文の内容と
合致する。
ロ・・・「見えない世界からのメッセージを受け止めることができる」という方向が誤
り。
ハ・・・「色彩は見えない世界に存在している」「かりそめの現実」という話題が誤
り。
ニ・・・「すべての色は」という主語の立て方が誤り。話題が違う。
ホ・・・「可視の世界と不可視の世界、意識と無意識を往還」という方向が誤り。
問十四(マーク・選択)
*空欄補充問題。第⑭段落の文脈を把握する。言葉のレトリックの問題と言ってよい。
⑭「自然界においては、「同じ色」など実在しない」
↓(しかし)
「同じ色が存在しない」
↓(のなら)
「色名は単なる「( Ⅱ )」でしかない」
↓
「不正確であるし、実体がない」
↓
「どんな名を冠しても、一つの情緒的な世界をかもし出すことができた」(例:夕顔
鼠)」
「色名と色の描写は「情緒的な世界」」
↓
「日本の古典文学には、色が多くのものをもたらした」
↓
*色名は「不正確」で「実体がない」けれど、「一つの情緒的な世界をかもし出すこと
ができた」という流れが理解できる。
*となれば正解は、「大まかな指標」しかないだろう。「不正確」=「おおまか」、
「実体がない」=「指標」と置き換えられる。
正解:「ニ」
問十五(マーク・選択)
*内容一致問題。選択肢の内容から、全体の趣旨というよりも第⑬段落、第⑭段落の内
容一致問題と考える。この二つの段落はこれまでの設問で内容が問われていない部分
である。
〈解答への道筋・思考のプロセス〉
⑬「およそ山野にある植物すべてから鼠色は染め出せるのです。しかも一つとして同じ
鼠はないのです」
↓
⑭「自然界においては、「同じ色」など実在しない」
↓(しかし)
「同じ色が存在しない」
↓(のなら)
「色名は単なる「大まかな指標」でしかない」/「不正確であるし、実体がない」
↓
「どんな名を冠しても、一つの情緒的な世界をかもし出すことができた」(例:夕顔
鼠)」
「色名と色の描写は「情緒的な世界」」
↓
「日本の古典文学には、色が多くのものをもたらした」
↓
*日本人が古来多くの色を生み出すことで、「情緒的な世界」かもし出してきた、とい
う内容を把握する。
イ・・・「必ずしも実際の色が存在しない凝った色名を作って」という方向が誤り。
ロ・・・「色名と色の対応は永続的なものではない」という話題が誤り。
ハ・・・「多彩な色合いを正確に表現するため」という方向が誤り。
ニ・・・「自然界からのメッセージとして」色を捉えてきた」という話題が誤り。
ホ・・・正解。
問十六(マーク・選択)
*全体の内容一致問題。冒頭の第①段落~第⑤段落に立ち戻り、志村ふくみの言葉が生
命や自然の「向こう側」に読む者を「引き込む」力があることをとらえる。
イ・・・「世界の多くの人々に」という部分の方向が違うので誤り。
ロ・・・「深い学識」「日本古典文学に独特な色名の特色を教えてくれる」という部分
の方向が違うので誤り。
ハ・・・正解。
ニ・・・「染色の歴史」は話題が違うし、「門外漢にも分かりやすい」も方向が違う。
ホ・・・「染色について~未来に伝承」という部分の方向が違うので誤り。
問十七(漢字書き取り)
1 堪能(堪納・湛能) 2 変貌